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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
掃討
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……!だけど!お前らには、ドラグーン隊があったじゃないか!誰にもその進路を阻むことなんてできない、無敵の飛竜たちが!!」

思わず口からついて出たその言葉に、しかしヒスイは鼻で笑い飛ばした。

「確かに、ドラグーン隊は、伊達や酔狂やのうてケットシーの最終兵器で虎の子や。けど、圧倒的な力は、それを振るうに値する動機がいる。あん頃のドラグーン隊は、それこそ世界樹攻略なんて大規模な作戦でもない限り、人目に触れられることすらなかった」

到底信じられない話だった。

なぜなら、その言葉が言外に語る真実は――――

「見捨てたんよ。ケットシー中枢は、PKに繰り返し遭うとる一般プレイヤーを切り捨てたんや。単純な差し引きや。たった一人の庶民を助けるために、虎の子の全容を見せる訳にはいかない。そんな反吐が出る最適解を皆が選んだからこそ、有象無象はその名の通り踏み潰されてたんや」

だけど、と彼女は言った。

これまでの冷たい様子が嘘のよう。一人の女性は色素の薄い頬を上気させ、恋する乙女のように目蓋を閉じた。

まるで、人生最良の瞬間を思い起こすように。

「……一人のヒーローがいた。一人の英雄がいた。その子は、たった一人で全てを変えた。一人一人、PKされてたヒロインをすくい上げて、まとめ上げて、鍛え上げて、ドラグーン隊と双璧を成すもう一つの軍を作った」

それは、そんな美談ではないかもしれない。

とある少年は、弱虫で泣き虫だった自分達など、眼中になかったかもしれない。

囚われのお姫様(マイ)を助け出すための、踏み台としての役割しかなかったかもしれない。

けど。

だけど。

「確かに、あてらは救われた」

今は、皆笑うとる。

彼女はそう言って、花がほころぶような笑顔を浮かべた。

自分達はどう頑張っても『特別』な何かにはなれない。なれっこない。自分の足で立ち上がれなかった私達がそんなことを望むなんておこがましい。

ただ、一度。

たった一度だけ、私達は壇上に上がった。

その一度の登壇が、世界を変えた。

「皆が笑顔のハッピーエンド、か。確かに笑える理想論や。けどな、少なくともソレはあったんや。あてらはその生き証人」

なぁ、駆け出しのヒーロー。

「まだその夢、諦めんよな?」

艶やかなその笑みの前で、一人の男は静かに落涙した。
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