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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
掃討
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いく。
死ねよ、と誰かがボソッとそう言った。
たぶん、それまでかけられた言葉の中で、その一言が一番心に刺さった。
やがてポツポツと、元々スプリガンだったプレイヤー達は片手を上げ、一様にシステムウインドウを出していく。
そのウインドウは、つい先刻までケットシーのサブアカウントどもが出していたものと同じ。投票のためのシステムタブだ。
彼らが何をしているのかは、一目瞭然だった。
ジックラドの天頂部。投票数の推移を表すその一大ウインドウでは、劇的な変化が起こっていた。
相変わらず、ケットシーの立候補者のほうには票が入りまくっている。
だが、ファナハンの方。
どんなにケットシー側に票が集まろうとも、減ることはなかったその数字が今。
猛烈な勢いで、減っていた。
「………あぁ」
身体から力が抜け、石畳の上に崩れ落ちる。
それすらも知覚できず、男の双瞳はそのウインドウから離れなかった。
吐き気がした。
胃が全部、裏返ったようだった。
領主が、開票時刻一秒前までその権限を行使できるように、一般のプレイヤー達でも、開票の直前まででも趣旨替えは可能である。
ようは、開票一分前に気まぐれで変えたとしても、それは一票としてカウントされるのだ。
脱力するファナハンの頭上で、高らかな鐘の音が鳴り響いた。
午後九時。
結果発表の時刻だ。
いつもの恒例行事として、街の外縁に沿う形で花火が打ちあがり、アルヴヘイムの冬の夜空を彩っていく。NPC楽団が当選者に勝利の行進曲を奏で始める。
いつもならば、ケットシーのようなお祭り騒ぎまでは行かなくとも、街中の酒場でカップをぶつけあうくらいはあったはずだ。
決して大々的なものでも、派手なものでもない。けれど、ささやかで小さな笑顔がそこにはあったはずだ。
だが、この場に笑う顔は一つもない。少なくとも、心の底からの笑顔を浮かべる者は。
わざわざ見るまでもない結果を見る奇特なヤツは誰もいない。
その場にいる全員は、その原因となった、今はもう領主ではなくなった一人の男に視線を注がせていた。
「……何でだよ」
追い詰められるまでもない。
ボロボロになったちっぽけな少年は、絞り出すようにちっぽけな言葉を投げ出した。
「不平等を是正するのは正しいことだ。俺はッ!……本当に、思っていたんだ、スプリガンのことを」
ふらふらと頼りない、迷子のような言葉の羅列。
きっと言っている本人が、一番惨めで無残な負け惜しみだという自覚はあるのだろう。
「後ろ指を指されない。そんな、レッテルを剥したかった。それの、何がいけなかったんだ」
「いけなくはなかったんやろうな」
ふぅ、と煙
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