暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
掃討
[4/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
いく。

死ねよ、と誰かがボソッとそう言った。

たぶん、それまでかけられた言葉の中で、その一言が一番心に刺さった。

やがてポツポツと、元々スプリガンだったプレイヤー達は片手を上げ、一様にシステムウインドウを出していく。

そのウインドウは、つい先刻までケットシーのサブアカウントどもが出していたものと同じ。投票のためのシステムタブだ。

彼らが何をしているのかは、一目瞭然だった。

ジックラドの天頂部。投票数の推移を表すその一大ウインドウでは、劇的な変化が起こっていた。

相変わらず、ケットシーの立候補者のほうには票が入りまくっている。

だが、ファナハンの方。

どんなにケットシー側に票が集まろうとも、減ることはなかったその数字が今。

猛烈な勢いで、減っていた。

「………あぁ」

身体から力が抜け、石畳の上に崩れ落ちる。

それすらも知覚できず、男の双瞳はそのウインドウから離れなかった。

吐き気がした。

胃が全部、裏返ったようだった。

領主が、開票時刻一秒前までその権限を行使できるように、一般のプレイヤー達でも、開票の直前まででも趣旨替えは可能である。

ようは、開票一分前に気まぐれで変えたとしても、それは一票としてカウントされるのだ。

脱力するファナハンの頭上で、高らかな鐘の音が鳴り響いた。

午後九時。

結果発表の時刻だ。

いつもの恒例行事として、街の外縁に沿う形で花火が打ちあがり、アルヴヘイムの冬の夜空を彩っていく。NPC楽団が当選者に勝利の行進曲を奏で始める。

いつもならば、ケットシーのようなお祭り騒ぎまでは行かなくとも、街中の酒場でカップをぶつけあうくらいはあったはずだ。

決して大々的なものでも、派手なものでもない。けれど、ささやかで小さな笑顔がそこにはあったはずだ。

だが、この場に笑う顔は一つもない。少なくとも、心の底からの笑顔を浮かべる者は。

わざわざ見るまでもない結果を見る奇特なヤツは誰もいない。

その場にいる全員は、その原因となった、今はもう領主ではなくなった一人の男に視線を注がせていた。

「……何でだよ」

追い詰められるまでもない。

ボロボロになったちっぽけな少年は、絞り出すようにちっぽけな言葉を投げ出した。

「不平等を是正するのは正しいことだ。俺はッ!……本当に、思っていたんだ、スプリガンのことを」

ふらふらと頼りない、迷子のような言葉の羅列。

きっと言っている本人が、一番惨めで無残な負け惜しみだという自覚はあるのだろう。

「後ろ指を指されない。そんな、レッテルを剥したかった。それの、何がいけなかったんだ」

「いけなくはなかったんやろうな」

ふぅ、と煙
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ