暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
掃討
[3/7]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
リ、と石畳の上で突っ伏す男の拳が鈍い音を立てる。
手を取り合う?交わすべき交易?
自分で言っていたろう。それらは、央都を囲むように連なる環状山脈によって困難だ。そもそもの話、大種族と交易できるほどの利潤を渡せるほどスプリガンが豊かだったら、ファナハンだってこんな危険な綱渡りを決行しなかった。
責任の押し付け。
正当防衛の主張。
彼女らがやっているのは、その場限りのゴマすりなどではない。
扇動
(
アジテート
)
。
個人ではなく集団の心理に取り入り、結果として個々人の意思を無視して人を動かす話術の一種だ。
―――ダメ、だ!ソイツに騙されるな!優しい顔をして近づいて、気付けば一を要求すれば十を剥ぎ取られる従属関係になるのがオチだ!!
自分のことなどどうでもいい。
どう綺麗ごとをほざいても、この大騒動の発端は自分だ。いくらでも責任をなすりつけるがいい。
だが、スプリガンがそんな末路になるのだけは、耐えられなかった。
どんな手を使おうとも、後ろ指を指されないようなハッピーエンドにしなければならない。
それが、愚者とさえ呼ばれない負け犬に残された、最後の仕事なのだから。
そう思い、散々に叩きのめされた身体を軋ませながら起き上がる男に、ゆっくりと人差し指が指された。
「お前だよクソ野郎」
「……っ」
「全部、全部、全部、あの負け犬野郎が悪いんじゃないでござるか?皆、今日の予定は何でござった??友達と食事?冒険?新生アインクラッドの攻略に励む人だっていたはずじゃあなかったでござるか????」
そうだ。
領主
(
ファナハン
)
はケットシーの軍勢に囲まれた時、このシナルの街の中に籠っていればいいと思っていたが、それは違う。領民の皆だって、その日その時の予定がある。
「それを潰したのは誰だ?それをないがしろにしたのは誰だ??」
恣意的に曲解された言葉は、病原菌のように群衆に浸透していく。
そうだ、と誰かが言った。
あるいは、それこそケットシー側の誰かかもしれないが。
それでも、その言葉が始まりの弾丸となった。
怒号が、慟哭が、喚呼の叫びとなって鯨波のように爆発した。
不満、不服、不承。
鬱積したフラストレーションが、目に見える形で一気呵成に吐き出される。
剥き出しの生々しい感情に、ビクつくことしかできない幹部陣。
やがてその体たらくに気付いたのだろう。
激しかった炎は、ゆっくりと収縮していった。だが、小さくなったとは言っても鎮火したのではない。
逆だ。
無秩序に大きく赤く燃え滾っていたガスバーナーの炎が、酸素の量を最適化することで整えられた憤激の蒼に変わるように、民衆の心は昏く粘質なそれへと変質して
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ