暁 〜小説投稿サイト〜
蟹の愛情
第五章

[8]前話 [2]次話
「身体が」
「うむ、だから鋏に弱い」
「しかもこの数ですから」
 蟹達がというのだ。
「我等の十倍はいます」
「これで争うと」
「はい、我等は確実にです」
 まさにというのだ。
「敗れます」
「ではか」
「残念ですが」
「わかった」
 苦々しい顔でだ、与太郎は傍の者の言葉に頷いた。
「ではな」
「貴殿にも相応しい相手がおろう」 
 大蟹、大甲利平は与太郎にまた言った。
「だからな」
「この婚礼は諦めろか」
「そうして去れ」
「仕方ない」
 与太郎は利平にもこう言った。
「ではな」
「うむ、湖に帰りだ」
「蛇の正室を迎えよというのだな」
「その通りだ」
「そうさせてもらう、わしも勝てぬ戦はせぬ」
 そこまで愚かではないというのだ。
「だからな」
「それではな」
「者共去るぞ」
 与太郎は手下の蛇達にも告げた。
「これでな」
「はい、わかりました」
「それではです」
「湖に去りましょう」
「ここは」
「ではな」 
 誇りは守ってだ、与太郎は長左衛門にも言った。
「そういうことだ、邪魔をした」
「はい、それでは」
「もう来ぬ、わしも約束は守る」
 伊達に蛇の総大将ではない、それで長左衛門にもこう言ったのだ。
 そのうえでだ、利平にも言った。
「正室の話は蛇の総大将の間でする」
「それも守るな」
「この者にも言った通りだ」
 長左衛門の方を見て利平に答えた。
「わしは約束は守る」
「蛇としてだな」
「蛇はしつこいが約束は守る」
 誇りがあるからこそだというのだ。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ