第四章
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目を輝かせて立って尻尾を振って舌を出してへっへっ、としていた。しかしワラビは。
怖がってうずくまっていた、そして二人の方をすがる様な目で見ていた、そのワラビを見てだった。権造は優しく笑った。
そのうえでだ、早百合にこう言った。
「幸いここからでも花火見られるしな」
「ワラビと一緒にいてあげるの?」
「こうした時はな」
ワラビが怖がっている時はというのだ。
「そうしてやらないとな」
「駄目だから」
「この娘はそんな娘なんだ」
ワラビを見つつ話した。
「凄く怖がりだろ」
「ええ、どんな子犬に吠えられても逃げるし」
「人間の子供も怖がってな」
「大きな物音でもびくってするし」
「花火の音でだ」
まさにその音でというのだ。
「怖がるからな」
「だからよね」
「今も怖いんだ、それじゃあな」
「一緒にいてあげるのね」
「そうしながら観るな」
花火、それをというのだ。
「今年の花火大会は」
「そうするの」
「椅子に座ってだ」
サンルームの中に置いてある安楽椅子だ、権造は時々そこに座ってタロそしてワラビと一緒にいる時間を楽しんでいるのだ。
「そうするな」
「そうね、そうしたらね」
「ワラビも安心出来る」
「それじゃあね」
「今年はここにいるな」
「梅酒いる?」
「いや、いい」
酒についてはだ、夫は断った。
「犬は酒の匂いが好きじゃないだろ」
「タロもワラビもね」
「犬はアルコールに弱いんだ」
それもかなりだ、ほんの少しの量が致死量になる程だ。
「だからな」
「もういいのね」
「後でも飲める」
酒、それはというのだ。
「だからな」
「じゃあお酒は後にして」
「ワラビ達と一緒にいる」
「それじゃあね」
「御前はどうするんだ?」
「そうね、私もね」
早百合は少し考えてからだ、夫に答えた。
「一緒にいるわ」
「そうするか」
「サンルームにね」
「よし、じゃあ今回は家族皆で観るか」
花火、それをというのだ。
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