第六章
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公園の森の木の上からだった。そこから彼等を見て言うのだった。
「甘いのよ。ジョーイは誰にも見つけられないわよ」
自信に満ちた言葉だた。そうして。
その素顔を、まさにルパンが変装を解く様にして露わにした。そのうえで誰も知らない彼の家に帰ったのだった。そうしてから休んだのだ。
梨本達はそれからも何とかジョーイの性別等を調べようとした。だが、だった。
結局何も見つからなかった。それで地団駄を踏むしかなかった。他の芸能リポーターや記者達も調べようとした。だが一人もだった。
ジョーイの性別も素顔も生い立ちもプライベートも掴むことができなかった。そうして。
ジョーイは謎のままだった。その謎の彼にマネージャーが移動中の車の中で尋ねた。
「結婚とかは」
「どうかしら」
笑ってこう言うだけのジョーイだった。
「してると思う?」
「わからないね。いや」
「いや?」
「知らないよ」
わからないというよりもそちらだった。
「全くね。君のことはね」
「そうでしょ。ジョーイのことは誰も知らないわ」
「性別も何もかもね」
「ええ。けれどね」
「けれど。何なのかな」
「その方が面白いでしょ」
ジョーイは後部座席に女の子の様に座りながら運転をしながら言ってくるマネージャーにこう返した。
「わからないままであることがある方が」
「君みたいに」
「世の中のことが全部わかったら」
どうかというのだ。その場合は。
「面白くないと思うけれどどうかしら」
「言われてみればそうだね。じゃあ君は」
「ずっと何もかも謎のままよ」
秘密は明らかにならない。何一つとしてだというのだ。
「それがジョーイよ」
「つまり君は謎だね」
「そうよ」
その男のものか女のものか全くわからない声での言葉だった。
「何もかもがわからないままよ」
「そしてその君を皆見て考えて議論する」
これまでの様にだ。これからも。
「そうなっていくんだね」
「そうよ。それが面白いでしょ」
「やれやれだね。本当にね」
マネージャーはそんなジョーイの面白そうな言葉を聞いて運転しながら嘆息した。
「それでもそれが君の売りでもあるね」
「謎でいること。それ自体がね」
「謎は謎であるからこそ魅力がある」
この事実もだ。マネージャーは言った。
「そういうものだね」
「そういうことになるわね」
こう言ってだ。そのうえでだった。
ジョーイは車の後ろで謎のまま座って笑みを浮べていた。その謎めいた笑みで。ジョーイはこれからも謎でいるのだった。全てを明かさないまま。
顔はいいけれど 完
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