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顔はいいけれど
第五章

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「本当に尻尾も何もかもね」
「掴ませないですね」
「手強いね。予想していたけれど」
 こう言う始末だった。二人は物陰でこっそりと食べ合っている。
「ジョーイが果たして男か女か」
「その証拠を掴むことは簡単じゃないですね」
「うん。けれど僕も鬼の梨本と呼ばれた男だ」
 鬼といっても性格がそうではなく仕事へのその姿勢がなのだ。
「絶対に尻尾を掴むよ」
「何としてもですね」
「今日最後のチャンスはね」
 梨本はお握りと一緒に買って来た麦茶、ペットボトルの五〇〇ミリリットルを飲みながら言う。
「車から降りてからだね」
「そこから何処に向かうかですね」
「そう。ジョーイの家まで行ってね」
「住所が何処か掴んで」
「そのうえでご近所から情報収集をするんだ」
 近所の人間ならジョーイが誰か知らなくてもそこにいる人が男か女か知っているというのだ。
「そうしよう。いいね」
「わかりました。それじゃあ」
 こうしてだった。梨本達は最後のチャンスに挑もうとしていた。
 そうして今日の仕事を終えて車から出たジョーイを追おうとする。だが。
 今度もだった。急にだった。ジョーイは公園の中に入り。
 そこで消えた。今度は夜の公園の森の中にだ。これにはだった。
 梨本も記者も公園の森の中で右往左往する。どれだけ周囲を見回しても。
 いなかった。それで梨本は言った。
「まるでこれじゃあ」
「忍者ですか?」
「うん、それだよ」
 今度言うのはこれだった。
「伊賀の影丸みたいだね」
「何ですか、それ」
「横山光輝先生の名作だけれど。忍者漫画の主人公だよ」
「横山先生っていったら三国志じゃないんですか?」
「三国志の前の名作だよ」
「そんな漫画も描いてたんですね」
「そうだよ。鉄人二十八号や魔法使いサリーもだよ」
 こうした名作も描いてきたのだ。横山光輝は偉大だった。 
 その偉大な漫画家の作品の主人公の様だと言ってだ。梨本は夜の公園を記者と一緒に探し回った。
 だがそれでもジョーイは見つからなかった。それで諦めて記者と共に肩を落として帰った。
 ジョーイはその一部始終を見ていた。何処から見ていたかというと。 
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