第五章
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「いいな」
「はい、わかりました」
「ではすぐに呼びましょう」
「そしてそのうえで」
「民達を助けましょう」
「そうするのだ」
こう命じて黒死病にあたるのだった、医者達が呼ばれすぐに苦しむ民達を救う様に動かせた。そしてその中にだった。
たまたま隣国である医者が黒死病を街から消したのを見た者がいてだ、彼が新しい領主に言った。
「街を石灰の水で洗い鼠を片っ端から焼いていました」
「そうすればか」
「はい、黒死病が消えました」
「そうなったのか」
「あと街の汚物を出さない様にしていました」
「そのこともしてか」
「黒死病は消えました」
そうなったというのだ。
「ですから」
「それをすればか」
「いいと思います」
「わかった、ではな」
領主はその医者の言葉に頷いた、そして彼が言う通りにすると。
実際に黒死病が消えた、それで言うのだった。
「これで何とかなりそうだな」
「そうですね」
「民が救われそうです」
「黒死病がなくなったので」
「そのお陰で」
「そうだな、私は兄上とは違う」
あの子爵とは、というのだ。
「ただ罹った者を隔離し殺すだけではな」
「何もなりませんね」
「穢れとして消すだけでは」
「それだけではですね」
「何もなりませんね」
「そう思う、そして私が正しかった様だ」
こうも言った。
「よかった」
「そうですね」
「先の子爵の様にしても」
「それは何もなりませんね」
「ただ罹った者が惨めなだけです」
「その通りだ、そして兄上がああなったことはだ」
黒死病に罹り生きながら焼き殺されたことはというのだ。
「当然のことだ」
「全くです」
「あまりにも無慈悲であられました」
「それではです」
「ああなったことも道理」
「そう言うしかありありません」
「まさにな、だが私は違う」
新しい子爵は遠い目になって言った。
「病に罹る者を救ってこそ主だ」
「そうしたことをしなければ」
「報いも受けますね」
「自分が罹った時ああなってしまうのだ」
誰からも見捨てられる、そうなるとだ。彼もまた兄には同情していなかった。むしろ喜んでさえいた、あまりにも冷酷で無慈悲な彼が無残な末路を迎えたことを。
疫病 完
2016・11・14
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