第二章
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「ご先祖様、十七世紀の人がお手紙拾ったことがあったらしいのよ」
「お手紙?」
「それを?」
「そう、海岸でね」
そうだったというのだ。
「それでもご先祖様字が読めなくてね」
「昔の人はそうね」
「当時は識字率かなり低かったし」
「普通の漁師さんじゃ読めないわね」
「それが普通ね」
「そうなの、それでね」
マルグリットはさらに話した。ちなみに大学では文学を専攻している、将来は学校の先生か博物館での勤務を希望している。
「お手紙読んでも意味がわからなかったらしいのよ」
「字が読めなかったらね」
「それも当然でしょ」
「別に驚くことでもないんじゃない?」
「普通のお話でしょ」
「いや、これがね」
ここでだ、マルグリットはこうも話した。
「村に帰ろうとしたら身分の高そうな貴族の人が兵隊さん何人も連れて来ていて」
「あら、急にお話が変わったわね」
「剣呑な感じになってきたじゃない」
話を聞く友人達のコーヒーを飲む手が止まった、大学の中の喫茶店の屋外の席での話はここで進展があった。
「それでどうなったの?」
「偉い人が兵隊さんまで連れて来て」
「それでどうなったのよ」
「一体」
「手紙を読んだのかって怖い顔で問い詰められたらしいのよ」
その身分の高い者にというのだ。
「どうかってね」
「それは怖そうね」
「若し読んでいたら、よね」
「危ない展開ね」
「そうなの、けれどご先祖様が字が読めなかったから」
当時の平民達の平均に相応しくだ。
「そう答えたのよ、するとね」
「すると?」
「するとっていうと?」
「運がいい奴だって笑って言われてそのまま帰されたらしいのよ」
「ああ、それね」
「それはよかったわね」
友人達はここまで聞いてだ、マルグリットに口々に言った。
「若しそこで字が読めてたらね」
「大変だったわよ」
「多分その場で消されてたわね」
「殺されてね」
「そうでしょうね」
マルグリット自身も腕を組んで答えた、このことについては。
「それで私も生まれていなかったかもね」
「そうした意味で運がよかったわよ」
「そうそう、マルグリットのご先祖様はね」
「よく字が読めなかったものよ」
「字が読めないことはよくないにしてもね」
それだけの多くのものを知ることが出来ないからだ、しあkしそれによって命が助かったならというのである。
「それで命拾いしたわね」
「そうよね、ただね」
ここでだ、友人の一人はふとだ。マルグリットに問うた。
「あんたの街のすぐ傍に監獄あったわね」
「ええ、鉄仮面が収容されていたっていうね」
マルグリットはコーヒーを再び飲みはじめた、そのうえでその友人に答えた。
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