暁 〜小説投稿サイト〜
隠れた趣味
第四章

[8]前話 [2]次話
「麻雀も競輪もボートもね」
「けれどですか」
「こっちはするんだ」
「競馬は」
「学生時代にたまたま友人に誘われて」
「それからですか」
「競馬場の雰囲気、馬や騎手や賭ける時にあれこれ考えて勝つか負けるかの緊張がよくてね」
 そうしたもの全てがというのだ。
「今もしているんだ」
「そうなんですか」
「ただ、賭けるお金はね」
「それはですか」
「自分のお小遣いの中でね」
 その範囲内で、というのだ。
「やっているよ」
「多額にはですか」
「賭けていないよ」
「ただ楽しんでいるだけですか」
「雰囲気やスリルをね」
「のめり込んでいないんですね」
「のめり込んだらね」
 それこそとだ、大場は濱田に言った。
「もう駄目だよ」
「競馬はですね」
」ギャンブルはね、ここは多いよね」
 大場は自分達が今いる競馬場の観客席を見回した、見れば様々な人間がいるが中には荒んだ目や格好の者もいる。
「そうした人が」
「競馬で何とかしようと」
「賭けて賭けての人がね」
「先生はそうしたことはですか」
「しないんだ」
 絶対にという言葉だった。
「そうした人も沢山見てきているからね」
「僕もわかりました」
 濱田も答えた、それも眉を顰めさせたうえで。
「ギャンブルにのめり込むと怖いです」
「溺れたらね」
「それこそ破滅です」
「そうなるからね」
「だから先生はですか」
「注意しているんだ」
 自分がそうならない様にというのだ。
「いつもね」
「のめり込まない様に」
「そうした人は本当に沢山見てきたよ」
 大場は遠い目になって濱田に話した。
「だからこそね」
「そうしたことにならない様にですね」
「やっていっているよ」
「そこは気をつけてますか」
「うん、しかし言わなかったこともあるけれど」 
 ここで少し苦笑いになってだ、濱田にこうも言ったのだった。
「僕が競馬をしているのはそんなに意外なんだね」
「こう言っては何ですがギャンブルとはです」
 大場、彼はというのだ。
「無縁だと思っていました」
「真面目じゃないと思われている趣味にはだね」
「縁がないと思っていました」
 大場、彼はというのだ。
「本当に」
「けれどだよ」
「先生は競馬がお好きですか」
「一生止められない趣味だよ」
 ここまで好きだというのだ。
「今日も楽しむしこれからもね」
「楽しまれるんですね」
「そうするよ、じゃあ今からまた馬券を買いに行くから」
「はい、じゃあまた」
「またね」
 かつての生徒と笑顔で別れてだ、大場は実際に馬券を買いに行った。彼はこの日も競馬を楽しみそれからもだった。競馬を楽しみだした。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ