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隠れた趣味
第二章

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「またそれ観るの?」
「お父さん好きよね、その番組」
「野球観ればいいのに」
「阪神の試合やってるのに」
「阪神の試合はスマホで観ているからな」
 観れば手元にそれがある、そこで阪神が巨人に一回から十点もぎ取りこの世に正義があることを天下に知らしめている。
「いいんだよ」
「阪神勝ってるのに」
「それでも観ないとね」
「阪神もいいがまずはこっちだ」
 テレビに必死にかじりつきながら言う。
「お父さんはな」
「何でそれだけは止められないの?」
「何処が面白いかわからないのに」
「どうしてかな」
「そこまでするのよ」
「止められないからだ」
 とにかく、という返事だった。
「お父さんはな」
「やれやれだね」
「全くよね」
 子供達は兄妹で話した、上の子は潤一郎といい下の子は弥生子という。国語教師なので作家から名前を取ったのだ。
「こんなので先生だから」
「凄いわよ」
「何でこんな趣味あるんだろ」
「これだけは、だから」
「この楽しみがわかるのは大人になってからだ」
 テレビにかじりついての言葉だった。
「二人共そのうちわかるかもな」
「いや、わからないから」
「そんなの何処がいいのよ」
 子供達の言葉は変わらない。
「何が面白いんだか」
「意味不明よ」
 子供達は視線も冷めている、しかしだった。
 大場の目は熱い、そしてそのうえでその趣味を続けていた。だが。
 彼はその趣味以外は普通でだ、子供達もこう言うのだった。
「まあいいか」
「うん、その趣味以外はいいから」
「優しいしな」
「変なことを言わないし」
 だからいいとした、大場は総合的に言っていい父親だった。それで美奈代も言った。
「その趣味だけだからね」
「僕のおかしなところはか」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「まだいいわ」
「お金もかけてないしな」
「よく借金もする趣味だけれど」
「そんなことしたらな」
 それこそとだ、大場は妻に彼にしては強い声で言った。
「本末転倒っていうか馬鹿だよ」
「馬鹿だっていうのね」
「よくそんな人いるけれどな」
「生計立てようって人もね」
「そんなのまず無理だよ」
「無理なのね」
「そんなことしようとするから身を持ち崩すんだ」
 このことはだ、大場は自分に言い聞かせる様にして言い切った。
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