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隠れた趣味
第一章

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                 隠れた趣味
 大場一陽は所謂いい先生である、生徒の面倒見はよく公平でしかも温厚だ。日教組に多い無能教師でも暴力教師でもない。
 思想的にも中立で自分の仕事に真面目であり同僚達にも人当たりがよく尚且つ家庭を大事にしている、教師として非の打ち所がない。
 しかしだ、その大場に対してだ。妻の美奈代はよく眉を顰めさせて直接言った。
「何でその趣味だけはなのよ」
「悪い、どうしてもな」
 大場は申し訳ない顔で三十五を超えてるがまだまだ水々しい顔の妻に言った、彼自身は黒縁眼鏡で顔は面長、頭はスポーツ刈りで中背で痩せた外見だ。白い歯が目立っている。
「これだけはな」
「止められないのね」
「学生時代からな」
 申し訳ない笑顔で言うのだった、黒髪をポニーテールにして皺はまだない切れ長の二重の目を持つ妻に対して。スタイルはすらりとしたものだ。
「そうなんだよ」
「これが、なのね」
「悪いな」
「全く、何でそんな趣味あるのよ」
「面白くてな」
「何処が?」
 これが妻の問いだった。
「あれの」
「いや、それがな」
「面白いっていうのね」
「そうなんだよ」
 こう言うのだった、あくまで。
「だからどうしても止められないんだよ」
「やれやれね」
「けれどあれだろ」
「ええ、お金はあまり使ってないわね」
「好きでもな」
 それでもというのだ。
「お金をあるだけ注ぎ込んだらな」
「大変だからなのね」
「だからな」
 それで、というのだ。
「俺もなんだよ」
「そこまではしないのね」
「そうなんだよ」
 実際にというのだ。
「そこまではな」
「成程ね」
「とにかくな」
「今日もなのね」
「ああ、行って来るな」
「今日は私が子供達と一緒にいるし」
 家にというのだ。
「行ってらっしゃい」
「何なら皆で行くか?」
「馬鹿言わないでよ、子供の行く場所じゃないでしょ」
「それはそうだな」
「行くなら一人で行って」
 突き放してしかも諦めている言葉だった。
「いいわね」
「ああ、じゃあな」
「それじゃあね」 
 こうしてだ、大場は妻に見送られてある場所に行った。休日はこうしてある場所に行くことが多くてだ。そして。
 テレビでも観ることが多い、それで子供達も言うのだった。
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