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ルーブルの聖女
第五章
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「テロは防げてよかった」
「はい、まずは」
「もう二度とな」
「起こさせない様にしないといけないですね」
「だから監視体制が強化された」
「監視カメラも増えて」
「わし等もさらにチェックする様になったしな」
 館内の隅から隅までだ、文字通り。
「そうなったがな」
「それはいいことですね」
「ああ、しかしな」
 それでもたとだ、ここでボレロはブリゲーニュに言った。
「同時にあの女の目撃例はなくなったな」
「そうなんですよね」
 ブリゲーニュもコーヒーを飲んでいる、その巨大な指で彼にしてみれば小さなカップを手にして飲んでいる。
「これが」
「またどうしてなんだろうな」
「わからないですね」
 ブリゲーニュはボレロに首を傾げさせて応えた。
「このことは」
「そうだな」
「はい、ただ」
「ただ、何だ?」
「悪い人じゃなかったんですかね」
 ブリゲーニュは考える顔でこうも言った。
「あの人は」
「幽霊でもか」
「結局幽霊か生きた人間かそれ以外かわからないですが」
「それでもか」
「はい、それでもです」
「あの女の人が何者か調べていてな」
 ここでだ、ボレロも言った。
「爆弾が見付かってな」
「テロは事前に防がれて」
 だが実行犯は捕まってはいない、今現在捜査中だ。ただ犯行声明は近頃世界を騒がしている自称国家から出ている。
「監視態勢も強化されて」
「いいことは多いな」
「はい、結果として」
「だからか」
「悪い人じゃなかったんじゃ」
 結果からだ、ブリゲーニュはボレロに話した。
「やっぱり」
「そうかもな」
 ボレロもブリゲーニュの言葉に応えて言った。熱く黒く甘くかぐわしいコーヒーを飲みつつ。
「結果論にしてもな」
「はい、それでも」
「結局何処の誰かわからないままだがな」
「それはそうですがね、ただ」
「ああ、ルーブルも美術館も入館者の人達も守られて」
「世界中の美術館のチェック態勢が強化されて」
「博物館もそうなった」
 テロリストは手前勝手な攻撃対象を選ばない、この忌々しいが認めるしかない現実を再認識してである。
「そうなったからな」
「いい人だったと」
「そう思うか」
「はい、結果として」
「そうなるな」
「ルーブルが救われることになって多くの美術館や博物館もそうなっていくことを考えますと」
 ブリゲーニュは考える顔になりボレロに話した。
「あの女の人はミューズですね」
「芸術の女神か」
「そうだったかも知れないですね」
 こうしたことを言うのだった。
「ひょっとしたら」
「ミューズか」
「ギリシア神話の」
「美術をテロから守る為か」
「そうだったかも知れないですね」
「だとしたらな」
 ボレロはブリゲーニュに考える顔のまま
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