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眼鏡っ子は筋肉がお好き
第四章
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「それじゃあね」
「うん、じゃあ宜しくね」
 こうして健太郎の告白は受諾となった。そうしてだった。 
 その日曜に二人で美術館に入った。白い壁と床、何処かバロックな感じのその中に入って健太郎はまずはこう言った。
「何か今日は」
「どう?いいでしょ」
「男の人の絵とか彫刻ばかりだね」
 所謂ポージングをしている半裸の男の絵や彫刻が並んでいた。それを見てだった。
 健太郎は目をしばたかせて横にいる、私服の亜美に言った。彼も私服だ。
「マッチョっていうか」
「それがいいんじゃない」
「筋肉好きなんだ」
「大好きよ」
 亜美は眼鏡の奥の目を輝かせて言う。
「本当にね」
「ううん、筋肉ね」
「そう。筋肉大好きだから」
「それで今日この美術館に来たんだ」
「若林君は筋肉好き?」
「ううん、それは」
 少し戸惑ってからだ。答える健太郎だった。
「どうかな。好きっていえば好きだけれど」
「じゃあ好きなのね」
「まあそうなるかな。それでね」
「それで?」
「この美術館の後は何処に行くのかな」
 健太郎は亜美に今いる美術館の次に行く場所について尋ねた。
「それで何処なのかな」
「あっ、考えてなかったの」
「ちょっとね。じゃあ」
 少し考えてからだ。亜美は答えた。
「喫茶店、いえゲームセンター行く?」
「ゲームセンターなんだ」
「そう。格闘ゲームしない?」
 ここでも筋肉だった。とにかく筋肉好きな亜美だった。
「一緒にね」
「僕弱くてもいいかな」
「弱くてもいいの。格闘ゲームはぶつかり合いがいいから」
 それ自体がいいというのだ。つまり筋肉と筋肉のぶつかり合いがいいというのだ。ここでもこの趣味を口にする亜美だった。
「そうする?」
「じゃあ。一緒にね」
「ゲームしようね」
 美術館の次はそこになった。二人で筋肉の芸術を観てからだった。
 二人で亜美の行きつけのゲームセンターに向かった。だがその途中の道でだった。
 如何にもという感じの連中が二人の前に出て来た。東映の時代劇に出て来る様な顔で言う言葉もそのままだった。
「なあ、金貸せよ」
「痛い目に遭いたくなかったらな」
 こう下卑た顔で言ってきたのだった。しかもその数もだった。
 三人とそのままだった。その三人組が二人に言って来たのだ。
「ほら、財布出せ財布」
「さもなければ怪我するぜ」
「そんなお金ないよ」
 健太郎はその彼等にこう返した。
「悪いけれどね」
「?手前痛い目見たいのかよ」
「女の子連れで粋がってるのかよ」
 やはりありのままの台詞で言う彼等だった。
「そんなこと言うとその娘も危ないぞ」

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