秘めたる想い
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と忘れられるものではない。 だが、アスナはそれすらもバネにして前へと進もうと言うのだ。
「それにね。キリト君が時間はかかるかもしれないけどユイちゃんのデータを復元出来るかもって……だから、私は絶対にこのゲームをクリアしてみせる!」
「……そう」
上層を見上げたアスナの力強く紡がれた言葉に、相槌を打つ。
いつの間にか釣りを楽しんでいたはずの二人が、釣竿と銛でチャンバラを繰り広げているのを見るなり、「あの二人は……!」とレイピアを片手に駆け出した背中を見送る。
一人取り残され、他人の目を機にすることがなくなりごろりと仰向けに寝転がる。
キリトたちにあの黒髪の少女ユイの真実を聞かされたのはつい最近のことだ。
彼女のステータス表示が通常と違ったのも、プレイヤーカーソルが出なかったのもバグではなく、仕様。 メンタルヘルスケアプログラム(MHCP)というプレイヤーの精神状態を確認し、問題があればそれを解決するプログラムAIであったらしい。 というのも、ゲーム開始直後にGMによってプレイヤーへの接触を禁じられたため、本来の役割を果たせず、そして負の感情に触れ過ぎ、バグを蓄積させてしまう。
そして、命令違反をした彼女がカーディナルに削除される瞬間、システムに割り込んだキリトがユイを構成するコアプログラムをカーディナルから切り離すことに成功したらしい。
ーーユイちゃんのためにも、絶対にこのゲームを、クリアしなきゃ
そう意気込んでいたアスナを思い出し、シィの懸念は杞憂だったと思う。
どうせ、ユイが居なくなって気落ちしているだろうところをリフレッシュさせてやりたかったのだろうが、前を進むと決めた彼女たちには必要なかったのかもしれない。
次のボス部屋は第75層。 第25層、第50層に次ぐ、第三のクォーターポイントであり、第50層の時よりもはるかに厳しい戦いが待ち受けているだろうことは予想がつく。 だが、現実に帰るため、勝たなければならない。 穏やかな日常で緩んだ決意を固め直し、起き上がった時、鈴の音色がメッセージの着信を報せた。
いつの間にか、空に澄んだ青は薄く灰色の雲がかかり、吹く風はいがらっぽい
不穏な気配を感じながらも、その内容を目に通し、俺は言葉を失った。
ーーー第75層ボス部屋偵察部隊、全滅
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