第三章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「筋肉に関わるお仕事がいいわね」
「筋肉に関わる!?」
友人達は亜美の今の言葉に首を捻った。
そしてだ。怪訝な顔でこう言うのだった。
「何、それ」
「ちょっと意味わからないけれど」
「トレーナーさんになるの?」
「それかプロレス事務所に入るの?」
「私自身は運動はできないけれど」
実は亜美は運動御地だったりする。走ることもその他の身体を動かすことも得意ではないのである。だからこそ余計という一面もあった。
「筋肉は大好きだからね」
「それでなのね」
「筋肉のお仕事につきたいの」
「何がいいかしら」
今もリングで行われている華麗かつダーティーなファイトを観ながらの言葉だった。
「果たしてね」
「まあ。考えたら?」
「色々あると思うけれどね」
「その中であんたが就きたい仕事を選べばいいからね」
「筋肉でもね」
「日本がマッチョだらけになればいいのに」
今度はこんなことを言い出した。
「切実に思うわ」
「想像するとちょっと気持ち悪いけれど」
「あまり趣味じゃないから」
これが彼女達の主張であり趣味だった。誰もが亜美の様に筋肉一辺倒とはいかない。むしろ亜美の方が特殊なのだ。
しかし亜美の筋肉好きは止まらない。その中でだ。
彼女のところに一人の男子生徒が来てだ。こんなことを言ってきたのだった。
亜美は丁度自分の席でプロレス雑誌を熱心に読んでいた。その彼女にこう言ったのである。
「あの、いいかな」
「あれっ、誰?」
「二年三組の若林健太郎だよ」
彼は名乗った。背は高いがひょろ長く髪は七三分だ。顔は面長で黒縁の四角い眼鏡をかけている。その彼が言うのだった。
「宜しくね」
「ええ、宜しく」
「それでだけれど」
その彼健太郎は亜美に言った。
「今度の日曜日ね」
「デート?」
「あっ、それは」
「そうね。ちょっとね」
その健太郎を雑誌を開いたまま見上げてだ。亜美はこう言った。
「身体がね」
「身体が?」
「そう。弱いわね」
ここでも筋肉だった。
「というかひょろひょろじゃない」
「それはその」
「背は合格ね」
ひょろ長いにも程があった。何と健太郎は一九〇はあった。
「けれど身体がね」
「あの、まあ何ていうか」
「まあいいわ。それでね」
「それで?」
「今度の日曜よね」
亜美は健太郎を見上げたまま彼に言葉を返す。
「私とデートしたいのよね」
「ええと、つまりは」
「わかるから。私に直接言いに来たのはね」
亜美は結構勘がいい。それで自分から言うのだった。
「だったらね」
「駄目かな」
「基本的には駄目よ」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ