番外編:殺人鬼の昔話1 下
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を4年間も鍛えた相手と聞いてどんなのかと思いきや……所詮はこんなものか」
ラシャに引導を渡した女性、亡国機業幹部スコール・ミューゼルは、あっけない幕切れに嘆息した。偶々作戦のために確保した拠点の中で4年前に行方をくらませた脱走兵を見つけたのが今回のあらましである。
マドカを確保する際、スコールは少なくない部下を失った。脱走する前よりも明らかにMは強くなっていたのだ。彼女の抵抗は凄まじく、ISを迅速に持ち出さないとさらなる人材の損失を招きかねない程であった。現在は既に身柄を拘束して組織の管理下にある潜水艦に監禁している。
スコールは亡国機業に居た頃は、いまいちぱっとしない成績だったMをここまでに鍛え上げたラシャなる人物に興味を持った。実力如何によっては自らの派閥に秘密裏に加える事も考えてはいた。だが、上層部から下された指令は、「関係者の徹底排除」であった。
不意打ちとはいえ、呆気無く死んでしまった辺り、自らの見込み違いだったのだろうと結論づけたスコールは携帯電話で部下を招集し、この男の死体を片付ける様に命じた。
直ぐ様ライフルで武装した男が数人駆けつけ、彼の周囲の血糊を拭き取りつつ、死体袋に身体を放り込んだ。その過程を見届けたスコールは、再度携帯電話をプッシュした。
「オータム、準備はできたわ。織斑一夏の拉致を実行しなさい」
「オーケイスコール。そっちは大丈夫なのかよ?」
軽快な返事が返って来た事に満足したスコールはチラリと死体袋に目をやった。
「拍子抜けといったところね、Mを鍛えたと聞いたからどんなのかと思ったけど、あっという間だったわ」
「へっ、男なんてそんなもんだろう。とっととドブ川にでも放り込んじまおうぜ」
嫌悪感を隠そうともしない部下兼恋人の様子に苦笑すると、スコールは部下にハンドサインを送り、死体袋を車に積み込ませた。
編田羅赦は死体袋の中で奇妙な走馬灯を見ていた。霞む視界に映る風景は、辛うじて病院の集中治療室だと分かり、ベッドに拘束されている自分の姿がそこにあった。全身に点滴やカテーテルをぶっ刺された姿は明らかに虫の息であると確信できる有様だった。
「これは?」
身を動かそうとするも全身に力が入らず、機械が定期的に排泄物を吸い出す音が虚しく響き渡るだけであった。
「駄目だ、動かんっ……」
その時、扉がゆっくり開くと、病院にあるまじき軽快なステップを踏みながら何者かが入室してきた。
「はろはろ〜、まだ生きてるかなあ?」
集中治療室にそぐわない脳天気な声が響いた。不思議とラシャには聞き覚えのある声であった。
「うわぁひっどい有様だねえ。ミサイルの破片が見事に突き刺さってぐっちゃぐちゃだぁ…手足も動かない、意識もない
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