番外編:殺人鬼の昔話1 下
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師と仰ぐだけでなく、父親のようであり、兄のようである存在と化しつつあるラシャとの日々は、とても心地よくて離れがたいものであった。だからこそ、彼女はラシャとの別れを極度に恐れるようになった。
「今会いに行った所で門前払いだろう。だから会いに行くにはどのみち日本に渡ってからだな」
ラシャの結論に、マドカは少しばかり安堵の表情を浮かべた。だが、別れの時は着実に迫っているという事実は変わらず、真綿で首を絞められるような感覚に青ざめた。
「とにかく、メシを食おう。久々にジャンクフードでも頬張ろうと思うんだが、リクエストはあるか?」
「特に無い、まかせる」
「了解、すぐ戻る」
街へと出かけていったラシャを見送ったマドカは、そのまま床に身を任せて寝息を立て始めた。せめて、夢の中では使命と残された時間を忘れられると信じて。
廃工場に戻ったラシャは、廃工場に纏わり付く違和感を敏感に感じ取った。廃工場周辺には真新しい足跡がまばらに点在しており、車のタイヤ痕が点在していた。今の今まで中型車がこの廃工場付近に駐車していたことを如実に物語っていた。
ラシャは瞬時に自身の警戒レベルを引き上げると、工場の中へと侵入を開始した。入って早々真新しい煙草の吸殻を確認したラシャは、他人の存在を確信した。直ぐ様ナイフを抜き放ち、歩を進める。この工場は女尊男卑の煽りを受けて閉鎖されて久しく、買い手が一切ついてない死に物件であった。故にここに態々足を運ぶ輩は狐狸の類か、自らと同じく脛に傷を持つ凶状持ちであることは想像に難くない。
薄暗い工場を陽の光のみを頼りに進み、遂にラシャはマドカと共に腰を下ろしていた部屋まで辿り着いた。そこには誰も居らず、荷袋のみが手付かずで放置されていた。
「……」
ラシャは膝を折り、そっと床を撫でる。僅かではあるが靴の跡が残っていた。自らとマドカの履物には無いパターンの足跡だった。またしても他者の存在を匂わせるもの、そして何より、『外には一切見られなかった足跡』だ。
そして次の瞬間には、ラシャは床に倒れ伏していた。急速に四肢から力と温度が失われていく。同時に胸のあたりが急速に熱を放ち、奔流となって噴き出たその色は赤。鈍感にも地に伏して漸くラシャは撃たれたことに気付いたのだ。半身をもぎ取られた蟲が如く、弱々しくもがこうとするラシャ。ナイフを持つ手に力を込めようとするも、その手の甲はピンヒールに踏み抜かれた。金髪の女性が、サプレッサーを装着した拳銃片手にこちらを見下ろしていた。
「ぐぅおおおおおぉぉぉ!?」
激痛と寒さに呻きつつ、ラシャは何とか身を起こそうと身を捩った瞬間、彼の身体はビクリと跳ね、沈黙した。金髪の女が更に数発彼の身体に弾丸を撃ちこんだからだ。
「全く、M
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