番外編:殺人鬼の昔話1 上
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せた。
「取り敢えず命だけ置いていってもらおうか」
ラシャは脳震盪を起こしているのか石畳に突っ伏して動かない男の首筋に爪先を這わせると、タバコの火を消すように踏みにじって脛骨を粉砕した。ラシャの予想外の行動に、残った男の表情が驚愕に染まる。
「どうした、よもや自分らは決して殺されないとでも思っていたのかな?」
その表情を読み取ったかのごとくラシャは嘲笑う。同時に屠った男の手からナイフを拾い上げる。
「さぁてさてさてさて、相棒が死んだ。お前はどうする?」
男は躊躇うこと無く懐から拳銃を取り出そうとする。大口径のリボルバー拳銃だ。ラシャも表情を引き締めて身構える。だが、男の手から拳銃は呆気無く滑り落ちてしまう。先程まで痛めつけていた少女が背後から忍び寄っており、男の首に腕を絡め、締め上げたのだ。
「!?…貴様ァ!Mゥ!!」
予想外の抵抗だったのか、男はパニックに陥り抵抗を行うも、容易く気を失うと同時に首があらぬ方向に曲がり、動かなくなった。
「あれまぁ、ガッカリ…っとそれより大丈夫か?」
ラシャは男の脛骨を粉砕した少女に駆け寄ったが、少女は男が取り出した拳銃を素早く拾い上げ、ラシャに体当たりをお見舞いした。完全に虚を衝かれ、もんどり打って転倒したラシャの胸目掛けて、少女は直ぐ様引き金を引いた。のだが、彼女の拳銃は無煙火薬の咆哮を上げなかった。少女は慌てて何度も引き金を引くも、銃は無慈悲にも沈黙を保ったままだ。
「探しものはこいつかな?」
ラシャの手から放たれ、少女の額にぶつかったものは銃のシリンダーだった。リボルバーにおける弾倉を意味するレンコン状の部品である。銃をつきつけられた瞬間、ラシャは目にも留まらぬ素早さで彼女の銃からもぎ取っていたのだ。
少女は拳銃を捨てて身構えるも、疲労が溜まっていたのか、男達に痛めつけられていたダメージが尾を引いていたのか、糸が切れたように倒れてしまった。
「……」
ラシャは倒れた少女に近寄り、爪先で入念に小突いた。そして、完全に意識を失っていることを確認すると、とどめを刺すべくナイフを振り上げた。が、少女の顔が偶然視界に入ると手を止めた。
まじまじと顔を見つめること数秒。ラシャは死体を片付けると、少女を担ぎ上げた。すると、少女のポケットから鎖の千切れたペンダントがこぼれ落ちた。
「ん?」
ラシャは即座に拾い上げた。ロケットだったのか、落ちた衝撃で蓋が開いて中の写真が見えていた。黒髪で鋭い目つきの凛々しい女性だ。肌の色からアジア系の人種だろう。ラシャはその写真を視界に収めた瞬間、えも言われぬ衝撃が走るのを感じ取った。
「これは、いや、この人は!?……そうだ、帰らなきゃ、帰らないととんでもないことになる!!」
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