第六章
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」
「明るくなってお友達もできたことが」
「悪い筈ないから。じゃあ学校もこの街も。お友達も楽しみなさい」
あらゆることをだというのだ。ザルツブルグにあるあらゆるものを。
「いいわね。そうしなさいね」
「そうね。塞ぎ込んで一人になってても全然楽しくないからね」
「そういうことよ。じゃあね」
「ええ、あのお城に皆と一緒に行って来るわ」
由実はこう応えてそのうえでだ。母が煎れてくれたコーヒーを飲んだ。
そして飲んでからだ。こう言ったのだった。
「何かこのコーヒーも」
「美味しい?」
「こんな美味しいコーヒーあったのね」
「オーストリアのコーヒーって美味しいのよ」
「そうだったのね」
「暗いと。それに一人だと何も見えないしね」
何もわからない、そうだというのだ。
「けれど明るくなって周りに人がいればわかるでしょ」
「確かに。そうね」
「じゃあお代わりするわね。オーストリアのコーヒー」
「ええ、クレープもね」
それもだというのだった。
「頂戴。それで今からこれ飲んで」
「何処か行くの?」
「グンドゥラのお家。友達のお家にね」
にこりと笑ってだ。母にこう言った。
「行って来るわ。お呼ばれしてるの」
「そう。それじゃあ楽しんできてね」
母も娘と同じ笑顔になって返す。由実はもう学校でも一人ではなかった。ワルツを踊れる様になったのである。そのワルツの中での笑顔だった。
ワルツは一人じゃない 完
2012・5・24
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