暁 〜小説投稿サイト〜
ワルツは一人じゃない
第六章
[2/2]

[8]前話 [9] 最初

「明るくなってお友達もできたことが」
「悪い筈ないから。じゃあ学校もこの街も。お友達も楽しみなさい」 
 あらゆることをだというのだ。ザルツブルグにあるあらゆるものを。
「いいわね。そうしなさいね」
「そうね。塞ぎ込んで一人になってても全然楽しくないからね」
「そういうことよ。じゃあね」
「ええ、あのお城に皆と一緒に行って来るわ」
 由実はこう応えてそのうえでだ。母が煎れてくれたコーヒーを飲んだ。
 そして飲んでからだ。こう言ったのだった。
「何かこのコーヒーも」
「美味しい?」
「こんな美味しいコーヒーあったのね」
「オーストリアのコーヒーって美味しいのよ」
「そうだったのね」
「暗いと。それに一人だと何も見えないしね」
 何もわからない、そうだというのだ。
「けれど明るくなって周りに人がいればわかるでしょ」
「確かに。そうね」
「じゃあお代わりするわね。オーストリアのコーヒー」
「ええ、クレープもね」
 それもだというのだった。
「頂戴。それで今からこれ飲んで」
「何処か行くの?」
「グンドゥラのお家。友達のお家にね」
 にこりと笑ってだ。母にこう言った。
「行って来るわ。お呼ばれしてるの」
「そう。それじゃあ楽しんできてね」
 母も娘と同じ笑顔になって返す。由実はもう学校でも一人ではなかった。ワルツを踊れる様になったのである。そのワルツの中での笑顔だった。


ワルツは一人じゃない   完


                   2012・5・24
[8]前話 [9] 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ