第八章
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「それかけるな」
「プレスリーね」
「知ってるだろ」
「私達の歳でも知らない人はいないと思うわ」
エルビス=プレスリーをというのだ、流石にこの歌手位になると誰もが知っている永遠の歌手だ。
「流石にね」
「マイケル=ジャクソンとな」
「この人は知らない人いないわよ」
ピラールもこう答えた。
「それでかける曲は」
「決まってるだろ」
「あの曲ね」
「ああ、今の俺の気持ちだよ」
結婚が決まって甘くなっている俺の。
「それをかけるな」
「それじゃあね」
「ラブミーテンダーな」
まさにこの曲だ。
「かけるな」
「じゃあマスターに行っておくわ」
ピラールは俺の顔を見て明るく言ってきた。
「あの曲みたいにね」
「甘く優しくか」
「お姉ちゃんと幸せになってね」
「そうなるな、絶対に」
「勿論私もそうなるから」
ピラールもというのだ。
「お互いにね」
「甘く優しくな」
「幸せになりましょう」
「そうなろうな、しかしピラールがたまたま店に来なかったら」
俺は店にかける音楽、プレスリーのそれの用意をしながら笑顔で過去を振り返ってこうも言った。
「俺は今みたいになってなかったな」
「結婚していなかったっていうのね」
「そうかもな、そう思うとな」
「私がこのお店に来たことは」
「いいウェイトレスを迎えられただけじゃなくてな」
最初はそれだけ思ったけれどだ。
「結婚相手を迎えられた」
「甘い恋愛も出来ている」
「それに導いてくれたな」
「最高の神様の贈りものだったぜ」
願いは適えられた、こうも思った。俺はラブミーテンダーのCDをセットしながら実際に神様に感謝した。今の甘い喜びをもたらしてくれたそのことに。
Love Me Tender 完
2017・3・29
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