暁 〜小説投稿サイト〜
ワルツは一人じゃない
第五章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 しかしその彼女にだ。グンドゥラはさらに言った。
「じゃあ楽しんで。好きならね」
「ええ。それじゃあ」
 こうしてだった。由実は青いドレスを着て舞踏会の中に己を置いた。そうしてだ。
 ワインを飲みお菓子を食べ音楽を聴く。音楽はワルツだった。
 そのワルツに乗りタキシードやドレスを着た学生達が踊っていく。皆楽しげに笑っている。だが由実はそうしたものを見てもだ。やはり楽しめていなかった。
 それで一人だけ沈黙して飲んで食べていた。その彼女はふとだ。
 前にグンドゥラを見た。見れば彼女は困った顔で周囲に言っていた。
「困ったわね」
「相手いないのね」
「次の曲の相手は」
「貴女達皆相手いるわよね」
 女の子達にだ。こう言ったのである。
「次は女の子同士で踊る曲なのに」
「その相手の女の子がいないのね」
「今度は」
「そうなの。参ったわね」
 眉を曇らせてだ。グンドゥラは言っていた。
「どうしようかしら」
「誰か知り合いいないの?」
「誰か」
「ええと。それは」
 グンドゥラは周囲を見回した。そしてだ。
 たまたま由実、ワインをグラスで飲んでいた彼女と目が合った。由実もそのことに気付いた。
 その彼女を見てだ。そのうえで周りに言ったのだった。
「ひょっとしたら」
「誰か見つけたの?」
「相手の娘を」
「ひょっとしたらだけれど」
 それでもだというのだ。
「あの娘に声をかけてみるから」
 こう言ってだ。そのうえでだった。
 グンドゥラは由実のところに一人で来た。そしてこう言ってきた。
「あの」
「私?」
「ちょっと今誰も相手がいなくて」
 正直にだ。由実にたどたどしい日本語で話していく。
「それで。よかったら」
「私がワルツを」
「一緒に踊ってくれるかしら」
 おずおずとした物腰で。グンドゥラは由実に話す。
「そうしてくれるかしら」
「私は」
 断ろうと思った。だが、だった。
 グンドゥラはここでだ。由実にさらに言ってきた。その言葉は。
「ワルツは一人じゃ踊れないから」
「一人で?」
「そう。代理の申し出なんて図々しいけれど」
 由実に対して失礼だと。それはわかっているというのだ。 
 だがそれでもだった。彼女は由実に言うのだった。
「それでも。お願いできるかしら」
「一人じゃないから」
「そう。一人で踊れないから」
 グンドゥラはまた由実にこう言った。
「だからね。お願いできるかしら」
「一人じゃできないから」
 ここでだ。由実はふと気付いたことがあった。それは。
 彼女は確かに学校の仲では孤独だ。それは今もだ。
 しかしここには一人で来
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ