第八章
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「怖いよ」
「裏の世界は」
「うん、あんな世界に関わったら駄目だよ」
こう言うのだった、あくまで。そしてだった。
二人は買いものを終えて部屋に戻った、彩加はお菓子を買うのも忘れず耕太もそれはしておいた。
そして家に帰る途中だ、お地蔵さんの像を見たが。
ふとだ、彩加はリュックの中の買いものを重いなと思いつつ言った。尚荷物は兄にかなり持たせている。
「あれひょっとして」
「違うと思うよ」
速攻でだ、耕太は妹に言った。
「ここ八条グループの社宅の前じゃない」
「そうだけれどね」
後ろに団地が整然と何十と並んでいる。
「ここじゃないの」
「だって江戸時代の話だよ」
「何時かわかっていないんじゃ」
「多分ね」
この辺りは丁半賭博だからと言う彼の予測だった。そこから時代を考証したのだ。
「そうだと思うから」
「この団地が江戸時代にあった筈ないわね」
このことは彩加もわかっていた、この住宅地は戦後に出来たのだ。
「幾ら何でも」
「そうだよね」
「うん、だからね」
それでというのだ。
「違うよ」
「そうなのね」
「別のお地蔵さんだよ」
絶対にというのだ。
「間違いなくね」
「そう言われると面白くないわね」
「面白くないんだ」
「かなりね、まあ仕方ないわね」
「江戸時代のお地蔵さんだよ」
耕太はこのことは多分だがはっきりと言った。
「また別のお地蔵さんだよ」
「大阪の何処かの」
「そうだよ」
「わかったわ、じゃあお家に帰ったら」
「御飯の用意だね」
「少ししたらね」
「今日は休日だしゆっくり出来るし」
それでとだ、耕太がここで言うことはというと。
「ゲームするかラノベ読むか」
「そうしてなの」
「焼酎飲みながら楽しもうかな」
御飯まではというのだ、そうした話をしつつ妹と一緒に自分達の部屋に帰った。二人共地蔵の像はもう振り返らなかった。
しかしその地蔵のところに一人の博打好きの夫を持つ女が来て夫の博打好きが止まる様に願っていた。二人はその地蔵像が実は博打を止める祈願で人気があることは知らなかった。その地蔵像もまた博打地蔵であることを。
博打地蔵 完
2017・3・28
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