第六章
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「人の着替えとか」
「だからそうしたことしないでしょ」
「悪いことだからね」
「そういうことも言ってるからね」
人として間違えたことはしないこともというのだ。
「無駄遣いもね」
「ギャンブルをしないことも」
「言ってるわよ」
「いいこともなんだ」
「そうよ、さっき出なかった話題もあるけれど」
「むしろいいことはあまり出てなかったね」
「こうした時はそんなものでしょ、そもそもね」
「そもそも?」
「お兄ちゃんどうしてギャンブルしないの?」
彩加は野菜を選び終えて次は糸蒟蒻を買うところで兄に問うた。糸蒟蒻は野菜のコーナーのすぐ近くにあった。
「お酒と煙草はしても」
「だって確実じゃないから」
「だからなの」
「ルーレットも賽子も確実にその数字が出る?」
自分が望むそれがというのだ。
「確実に」
「そんな訳ないでしょ」
彩加は耕太にあっさりと答えた。
「絶対にないわよ」
「そうだよね、トランプでもね」
「絶対がないのがギャンブルでしょ」
「パチンコでもね」
「競馬も麻雀も」
「確実なものが出るからいいんだよ」
耕太は言い切った。
「実験でも開発でもね」
「つまり絶対な確実ね」
「これが出ないと本当にね」
耕太にとってはというのだ。
「駄目だよ」
「お兄ちゃんにとっては」
「そう、意味がないから」
だからだというのだ。
「僕はそういうのみ興味ないんだ、それにね」
「それに?」
「博打地蔵の話を聞いてね」
「博打地蔵?」
「昔丁半賭博に凝っていた女の人がいて」
耕太は適当に糸蒟蒻を取ろうとしたが彩加が自分から取って目でこちらがいいと言われて引っ込んだ。そうしつつ話した。
「地蔵さんと丁半やってね」
「それでなの」
「御飯出してもらったりしてたけれど」
「賭けて勝って」
「色々あってね」
話の途中は省略した。
「最後は博打止めて真面目に働くけれど」
「そのお話を読んで」
「ギャンブルはよくないって思ってね」
「それからなのね」
「子供の時に読んで」
まさにそれ以来からというのだ。
「しなくなったんだ、ゲームやっててもカジノとか出るよね」
「トランプとかルーレットもね」
「闘技場もあるけれど」
そうしたゲーム内ゲームでのギャンブルがというのだ。
「それも確実じゃないね」
「だからなのね」
「しないんだ」
「負けるかも知れないから」
「そういうのに時間をかけるよりも」
不確実なギャンブル、それにだ。
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