第三章
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妹のスーパーでの買い出しにも付き合わされてだ、そこでたまたま会った妹のクラスメイト達にこう言われた。
「あっ、彩加ちゃんのお兄ちゃんですね」
「はじめまして」
「噂は彩加ちゃんから聞いてます」
「学校でいつも」
「いつもってどんなのかな」
野暮ったいジャージ姿でだ、彼は妹の友人達に尋ねた。隣にこんなところで会うなんて、と嫌な顔になっている妹を見ながら。
「一体」
「はい、頭は抜群にいいって」
「公立大学優秀な成績で院まで出たって」
「それで博士号も持ってて」
「今も技術者としてお給料もいいって」
ここまではいい話だった、だがここで女子高生達は今は私服姿の彩加を見つつこうも言った。
「けれど生活は酷いって」
「お風呂も歯磨きも洗濯も滅多にしなくて」
「お酒と煙草ばかりで」
「お食事なんかもいい加減って」
「うわ、学校でも言ってたんだ」
耕太は彩加を見て思わず言った。
「酷くない?」
「悪い?」
彩加は兄の指摘に一瞬怯んだが開き直って言い返した。
「私嘘は言わないわよ」
「いや、そういう問題じゃないんじゃ」
「私は嘘は言わないし隠し事も言わないの」
決して、という言葉ではあった。
「だからよ」
「僕のこともっていうんだ」
「そうよ」
開き直ったまま中央突破にかかった。
「それだけよ」
「何か凄い居直りなんじゃ」
「家でも学校でも言ってることは同じよ」
完全にというのだ。
「ただそれだけよ」
「それだけって」
「とにかくお兄ちゃんのことで嘘は言ってないから」
「はい、彩加ちゃん嘘は言わないですよ」
「口は悪いけれどそれは絶対にしないです」
「あと裏表もないです」
「いつもこんな風です」
彩加のクラスメイト達もこう言う。
「短気で気が強いですけれどね」
「あっさりしてて面倒見もいいですから」
「嫌われてはないですよ」
「むしろ男女共に人気があります」
「そういうことは言わなくていいわよ、とにかくね」
彩加は今度はクラスメイト達を見つつバツの悪い顔で話した。
「何であんた達ここにいるのよ」
「だってここ八条グループの社宅の近くだしね」
「私達皆親と一緒に住んでるしね」
その社宅である団地でというのだ。
「そりゃいるわよ」
「彩加ちゃんも近くにいるんだし」
「この辺りでもよく会うじゃない」
「だからよ」
ここでも会ったというのだ。
「私達は遊びでここに来たけれど」
「お菓子買いにね」
「彩加ちゃんはお兄さんと買い出しなのね」
「それで来てるのね」
「それはそうだけれど」
それでもとだ、彩加はバツの悪い顔のままで答えた。
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