第三章
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りたいわよ。我慢できないのよ」
「由実、そう言ってもね」
「仕方ないことはわかってるわよ」
だがそれでもだというのだ。
「それでも。もう嫌よ」
「そんなに嫌なのね」
「ええ、日本に帰りたいわ」
その泣きそうな顔で言う言葉だった。
「ザルツブルグなんて。大嫌いよ」
そしてオーストリアもだった。由実はもう嫌で嫌で仕方がなかった。
学校でもだ。彼女はいつも一人でいて誰にも顔を向けようとしなかった。しかしだった。
母に感情を爆発させた二日後だ。塞ぎ込んだままで自分の席に座っている彼女の前にだ。
一人の少女が来た。彼女はたどたどしい日本語でこう言ってきた。
「あの。池畑由実さん?」
「何?あんた確か」
「そう。グンドゥラよ」
微笑んでだ。こう言ってきたのだった。
「グンドゥラ=ディースカウよ。宜しくね」
「ディースカウさん?」
「同じクラスのね。今までお話したことなかったわね」
「そうね」
そう言われてもだ。由実はというと。
暗い顔で俯いてだ。こう返すだけだった。
「そういえばそうだったわね」
「あのね。それでだけれど」
「何かあるの?」
「今度。学校の体育館で舞踏会があるのよ」
ザルツブルグ、音楽の街らしくだ。それがあるというのだ。
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