第十六話 そして疾風怒濤の日々
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なく笑顔を返し承諾の意思を示した公子に、オフレッサー大将が豪快に笑って言葉をかけた。
『いくらなんでも褒めすぎじゃ……?』
『奇遇だね。僕も今そう思った』
義歯だらけの口を大きく開けて笑うオフレッサー大将の手放しの保証に俺はブルーノと顔を見合わせて呆れた。
見かけによらず政治に敏感なオフレッサー大将のこと、俺より上達するというのはどう考えてもお世辞であろう。だが自分の力を自覚した直後、しかも発言者が発言者だけにオイゲン公子は額面通り受け取ったようだ。みるみる目が輝きを増していくのを俺は不吉な予感とともに見守った。
そして翌日、幼年学校の寮にはすぐにも薔薇の騎士にも勝てるようになるという夢想で頭をいっぱいにし、肥満した体を特別誂えの制服に包んだオイゲン公子の姿があった。
「先が思いやられる……」
俺とブルーノが異口同音に吐き出した言葉は、すぐに現実のものとなった。
俺はその後数週間の間に十人を超えるぼんくら貴族の馬鹿息子の更生任務に駆り出される羽目になったのである。
剣術試合で、フットボールで、射撃で、ビリヤードで。叩きのめしてはおだて上げ。一人やる気にさせるごと体重が減少する日々に、俺のやる気はみるみる減少していった。
成果がなかったわけじゃない。
オイゲン公子の一件でチームを組んだシュラー、アレクそしてルーカスは俺のチームの一員とみなされ、ブルーノやホルストともども連れて行くことに校長自らのお墨付きがついた。
褒賞もあった。十人屋敷から引っ張り出して入寮させたその日、十人目のファルストロング一門の末席、コルネリアス一世の量産した元帥の一人で同盟公用語の研究家でエキスパートであったベーレンス元帥の子孫ベーレンス男爵──OVAのガイエスブルク陥落の回でツィンマーマン男爵の隣でしょぼくれてたじいさんだ──の勉強嫌いの孫息子を校長の所に連れて行って戻った部屋で、俺は父上から黄金拍車の騎士に昇爵が決まったとの手紙を受け取った。同時にブルーノの父上フォン・クナップシュタインはクナップシュタイン男爵家の相続が決まり、クナップシュタイン男爵は本家筋で相続人が絶えていたクックスハーフェン伯爵の家名を襲名することが認められた。門閥に属していなかったシュラーの伯父上シュラー子爵はマールバッハ一門に迎えられ、アレクの父上バルトハウザー大佐は最前線のイゼルローンからガイエスブルク要塞に転任になり、真鍮の拍車の騎士に叙任された。来期の准将昇進も内定したという。ホルストの父上はイゼルローン駐留艦隊から訓練部隊に転出し、大尉から少佐に昇進。間もなく中佐待遇に、正式な中佐になった。レーリンガー男爵は宮内省での職位が家格以上に上がった。
帝国の国是を考えると目覚ましいというか嘘のような昇進、大出世である。
「やったな、アルフ!」
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