暁 〜小説投稿サイト〜
殺人鬼inIS学園
第十四話:転校生と殺人鬼4
[5/5]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


「それに、これから死ぬ人間に名乗っても無意味だろう。奥さんは何処だ?」

 青年の冷えきった声色に、ギデオンは数歩後ずさりをした。この青年からは獣じみた何か。強いて表現するならば「人間の流儀が通用しない」様な理不尽さが感じられた。心音が一拍子打つ毎に見えない真綿が首を絞めてくるような恐怖。自らに向かって徐々に迫りつつあるダモクレスの剣とも言える青年は再び口を開いた。

「聞こえなかったようなのでもう一度質問するよ。奥さんのジャサント・デュノアは何処だ?言えば楽に殺してやる」

 一歩、また一歩とラシャが近づく。ギデオンは最早自らを救い出すものはこの世にはなく、如何にして安らかな死を迎えるかという算段をつける以外に道はない事を悟った。

「家内は逃げたよ、いち早く察知してな……今頃国境を超えてドイツ経由でスイスにでも向かっているのではないかな?……さあ、殺してくれ。私はもう疲れた」

 ラシャは、それに呼応するようにナイフを振り上げたが、何を思ったのかギデオンの胸ぐらを掴むと、窓ガラスに叩きつけた。

「ぐぅ!?……な、何を!?」

「何、どうせなら劇的にと思ってな他意はないよ」

 ラシャは冗談を飛ばす若者のようにウィンクを飛ばすと、そのままギデオンの腹に掌底を食らわせた。刹那、背後の窓ガラスに蜘蛛巣状にヒビが入り、ギデオンの身体はビルの谷間の向こうへ消えていった。

 翌日、ジャサント・デュノアの遺体が発見された。遺体は無残にも頭部を切断されており、その頭部も下顎を大いに損壊されていた。安物のハンカチで切断面は覆われており、遺体の背中には「7月27日に宜しく」と刻まれていたという。
 この事件後、フランス政府は蜂の巣をつついた様な騒ぎとなり、国連の調査を受けることになった。そのため、多くの政治家が汚職の嫌疑で逮捕、投獄されることになる。結果、デュノア社倒産による大規模なIS産業の立ち遅れ、欧州防衛計画イグニッション・プランの除籍等、フランスは痛みを伴う変化を強いられていくことになる。

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ