巻ノ八十三 仕置その七
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「安房守殿のことはな」
「どうしてもですか」
「何かとよからぬ話があるからな」
それでというのだ。
「やはりおいそれとはな」
「弟もですか」
「貴殿には悪いが」
演技をして言うのだった。
「どうにもな」
「そこを何とか」
信之は家康にまた頭を垂れて言った。
「お願い申す」
「どうしてもか」
「はい、どうにかお願い出来るでしょうか」
「殿、ここはです」
芝居に合わせてだ、本多忠勝が言ってきた。
「それがしにも免じて」
「だからか」
「はい、お二人のお命は」
それだけはというのだ。
「お助け下さい」
「御主がそう言うならな」
家康も納得したふりをした。
「わかった」
「それでは」
「うむ、二人は死一等を減じてじゃ」
そのうえでというのだ。
「高野山に流罪としよう」
「そうして頂けますか」
「そこまで願うのなら仕方がない」
家康は信之に優しい笑みを浮かべて言った。
「平八郎も言うしな」
「有り難きお言葉」
「平八郎に感謝する様にな」
笑みを浮かべたままだ、家康は信之に話した。9
「このこと、よいな」
「肝に銘じます」
「それではな、さて」
ここまで話してだ、家康は信之にこうも言った。
「御主への褒美は父親と弟の領土をじゃ」
「そのままですか」
「やるものとする」
こう言うのだった。
「それでよいな」
「これまた有り難きこと」
「それではな」
こうしてだった、家康は信之への褒美のことも決めた。この話はすぐに昌幸と幸村にも伝えられた。その話を聞いてだ。
幸村は十勇士達にだ、こう言った。
「我等は高野山に入ることになった」
「大殿と共にですな」
「そうなったのですな」
「あの山で機を待つ」
「そうなりました」
「来たくないのならよい」
幸村は微笑んでだ、十勇士達に言った。
「それならばな」
「よいのですか」
「我等が高野山に入りたくないのなら」
「それならばですな」
「殿と一緒でなくとも」
「それでもいいのですか」
「うむ」
まさにという返事だった。
「御主達の好きな様にせよ」
「殿、何を言われますか」
最初にだ、猿飛が笑って幸村に言った。
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