二章 追いつかない進化 - 飽食の町マーシア -
第27話 湖 − それは陸水が生み出した儚き地形 −
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。
これからは、目の前のことだけではなく、町全体のため……いや、この国や、この大陸のために頑張ってください。その能力はあるはずですから」
なるほど――。
シドウは、アランの意図にようやく気付いた。
* * *
湖の湖畔。
広い砂浜になっているところにシドウが着地すると、ティアはぴょんと飛び降り、一つ大きな伸びをした。
「あー! 気持ちよかった!」
満足そうにそう言うと、ドラゴン姿のシドウの横顔を、右手の拳で力強くパンチした。
「なんで殴るの……」
「気持ちよかったお礼!」
「……」
「ふふ。たしかに、空というものはよいものですね。私も初めての経験でしたが楽しかったです。シドウくんには感謝です」
アランも降りながら、そう言う。
そして、トーマス少年が降りるのを手伝いながら「大丈夫でしたか?」と声をかけた。
「ちょっと怖かったですが……貴重な経験でした。シドウさん、ありがとうございました」
そう言うと、トーマス少年もシドウのほうを見て、少し硬いながら笑顔を見せた。
シドウは変身を解いて着替え、四人は砂浜に座った。
あらためて湖畔で見ると、大きな湖である。
上下でよくマッチングした、湖面の青。
決して雨の多いところではないが、左右を見ると森もあった。
「……シドウ。湖ってなんか不思議じゃない?」
「不思議?」
「うん。こんなに大きな湖なのに、寂しく見える。なんでだろ? 海と違って波があまりないからかな?」
まるで水が砂浜を撫でているような、穏やかな波打ち際。そこを見つめながら、ティアが言った。
シドウはティアが叙情的なことを言い出したことに対して驚いたが、思うところを答えた。
「そうだね。それもあると思うけど、湖自体の性格のせいもあるかもしれない」
「性格って何?」
「湖って、寿命が短い地形で。流入する川が土砂を運んでくるから、いずれ埋まって消滅する運命にあるんだ。だから、生物の目には寂しく映るようにできているんじゃないかな」
「へー。そうなんだ。寿命が短いって何年くらいなの」
「湖の成因にもよるけど、普通は何千年か、何万年か、かな。構造湖と言って、地殻変動で出来た湖はもっと長いけど、そういうのは例外」
「え? 普通は何千年か何万年? じゃあ長いじゃないの」
「自然の地形にしてはかなり寿命が短いほうなんだ。まあ、人間の寿命よりはずっと長いけどね。ティアがおばあちゃんになっても、きっと今見てるこの景色にはさほど変化は――」
例によってシドウの顔面に荷物袋が命中し、最後までは言えなかった。
「なんでわたしがおばあちゃんになるの!」
「え、女の人なら誰でもなるよね?
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