二章 追いつかない進化 - 飽食の町マーシア -
第27話 湖 − それは陸水が生み出した儚き地形 −
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ところが。問題はそこからである。
自らがアンデッドになる行為≠犯したとしても、アンデッドとなってしまえば、もう人間ではない≠ニなってしまう。
つまり、その時点で罪≠問える対象ではなくなってしまうため、矛盾してしまうのだ。
しかも、仮に無理やり『裁く』対象にしたとしても、『死刑』以外の選択肢がない――という指摘もあった。
「罪を償ったからといって、野放しにして町を歩かせるわけにはいかないだろう?」
つまり、社会復帰が物理的に不可能なので、罪を償わせること自体が無意味ということなのだ。
アンデッドには寿命も存在しないため、『終身刑』は永遠に牢でつないでおかなければならず、選択肢としてはあり得ない。
かと言って、『懲役』では刑期を終えて出てきたときに困る。
「非情なようだが、生前の記憶があろうが人間扱いせず、自警団や冒険者の手で処分≠キることが最も安全であり、望ましい」
副町長は後味が悪そうな顔ではあったが、そう結論を出した。
今後同様の事件が起きた場合は、聴取などの目的で捕えることはあるかもしれないが、その場合でも裁判をおこなうことは無理だろうということらしい。
ギルド長や自警団の団長もスッキリという表情には見えなかったが、それに同意した。
ただ、これはあくまでマーシアの町の現時点での′ゥ解である、という点でも出席者の意見は一致していた。
『生前の記憶を持ったアンデッドが出現した』という事実は、非常に深刻な問題である。これだけ大きな問題であれば、王都ダラムの王城や冒険者ギルドが違う方針を出せば、そちらのほうを優先したいとのことだった。
もっとも、違う方針を出す可能性は「限りなくゼロに近い」らしいが……。
アンデッドの件の話が終わると、今度はシドウたちのほうから、副町長に対して提案をした。
提案の内容は二点。この町の今後のことである。
一点目は、マーシアの町に肥満の人間が増えすぎていることについて、である。
前町長が揉み消してはいたが、『怪我が治らない病気を引き起こしているのは肥満』という研究結果がハッキリ出ていたわけであるから、町主導で改善していくことを求めた。
たとえば、周辺の町と結んでいる街道を整備し、馬車が通れるようにしてはどうか――と勧めた。
直接の原因は食料価格が安すぎることであるが、それを引き起こしている大元は『需要と供給のバランス崩壊』である。他の町からの流入による人口増や、食料を他の町へ売ることで町内への流通が減れば、少しは良くなるかもしれない。
そして二点目は、タリス教の聖堂付属の治療所に予算を振り分け、病気に対しての研究活動を復活させることである。
町主導で積極的にお金を動かし、積極的に病気と
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