第三章
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「有り難う」
「いや、お礼なんて」
幹部にまだ教育課程にある士が礼を言われたのだ、それで河原崎は驚いて謙遜の言葉を返した。
「いいですよ」
「そう言ってくれるか?」
「はい、とても」
「これは私の素直な気持ちだ」
「分隊士の」
「だから言ったんだ」
礼をというのだ。
「それで受けてくれ」
「そうですか、それじゃあ」
「そうしてくれ」
礼を受けてくれというのだ、河原崎もこう言われては受けるしかなかった。彼はそのまま教育隊の教育を受けていったが。
それが終わる間際にだ、彼は同期の面々に言われた。
「第一分隊士九州の人らしいぞ」
「九州のか?」
「ああ、鹿児島生まれだってな」
九州のそこだというのだ。
「自衛隊九州の人多いけれどな」
「大体三分の一だな」
「それであの人もだってな」
「九州生まれでか」
「鹿児島の人らしいな」
「鹿児島っていうと」
その話を聞いてすぐにだ、河原崎は気付いた。
「西郷さんの出身だろ」
「ああ、そうだよ」
その通りだとだ、今河原崎に話す同期も答えた。
「御前も知ってるだろ」
「ああ、よくな」
「だから分隊士の出身は西郷さんと同じだったんだよ」
「そうだったんだな。だからか」
「だから?」
「いや、あの人西郷さんについて話す時にな」
抜刀隊のことを聞いたその時のことをだ、河原崎は思い出しつつそのうえで同期に対して話した。
「何か懐かし気で悲しい感じでな」
「そうして話してたんだな」
「俺にな」
西郷隆盛、そして士族達のことをだ。
「そうだったんだな」
「あの人も西郷さん好きなんだな」
「好きっていうかな」
それよりもとだ、河原崎はさらに話した。
「愛情があったな」
「西郷さんにか」
「それを感じたよ」
河原崎からだというのだ。
「何かな」
「そうだったのか」
「ああ、俺にそうした人いないけれどな」
故郷の英雄だ、彼のそうした相手はいないというのだ。
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