第二章
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担がれてだ、腹を決めて彼等の盟主となってそのうえで政府と戦ったのである。
「西南戦争の首謀者になってな」
「最後は自決したんですよね」
「そうなったんだ」
若松はこの話を遠い目になって河原崎に話した。
「凄い人だったんだがな」
「それでもですか」
「結局な」
「西南戦争で負けて」
「悲しい最期だったらしい」
その自決の時はというのだ。
「立派だったらしいがな」
「それでもですか」
「そしてその西郷さんと戦った時の歌だ」
抜刀隊の歌はというのだ。
「政府軍が薩摩軍と戦うな」
「その時の戦争で」
「西郷さんを念頭に置いた曲だった」
これから戦う敵のことをだ。
「だからあそこまで褒めているんだ」
「凄い褒めていると思ったら」
「ああ、幕末と維新はな」
日本を大きく変えたこの時代での様々な出来事はというのだ。
「西郷さんがいなかったら、って時も多かった」
「そのこともあって」
「だからだ」
それでというのだ。
「あの歌は西郷さんを褒めているんだ、それにな」
「それに?」
「西郷さんはあの戦争の時は敵だった」
その立場だったというのだ。
「けれど戦後すぐに明治天皇が言われたんだ」
「天皇陛下がですか」
「西郷さんは逆賊じゃないってな」
国家元首であられる陛下ご自身がというのだ。
「陛下も西郷さんを大事にされていてな」
「叛乱を起こしたのに」
「そう言われたんだ」
敢えてご自身でだったのだ。
「逆賊でないとな」
「何か凄いですね」
「だから戦争が終わって暫くして明治天皇は西郷さんを許されたんだ」
「謀反人ということから」
「そして高い位を贈られたんだ」
叛乱を起こして死んだ西郷にというのだ。
「そうされたんだ」
「そんな経緯があったんですか」
「あの歌は日本軍も西郷さんも褒め称えているんだ」
そして西郷と共に戦った薩摩の者達もだ。
「どちらもな」
「そうした軍歌ですか」
「西郷さんは英雄として活躍して逆賊として死んでまた英雄に戻ったんだ」
若松はこのことも遠い目で話した。
「その西郷さんも歌った歌だからな」
「ああした風になっていますか」
「特別な歌だ」
自軍だけでなく敵となった者もというのだ。
「両方を褒めたな」
「そうした歌だからこそ」
「ああ、よく私に聞いてくれたな」
その歌のことをとだ、若松は河原崎に嬉しそうに話した。
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