第一章
[2]次話
抜刀隊
陸上自衛隊に入ったばかりでその曲を聴いてだ、河原崎佳孝は同期の面々に首を傾げさせて言った。
「敵リスペクトしてね?」
「だよな」
「どう聴いてもな」
「そうだよな」
「褒めてるよな」
同期の面々も同じ意見だった。
「天地入れざる朝敵とか言うけれど」
「英雄とか言ってな」
「古今無双とか」
「敵兵まで褒めてるじゃねえか」
「何でそんな曲なんだ?」
「その敵をやっつけるって言っても」
「やけ褒めてるな」
「こんな敵褒める曲ないだろ」
「何でこんなに褒めてるんだ?」
河原崎達は誰もが首を傾げさせた。それで河原崎は同期の面々にこう言ったのだった。
「ちょっとこの曲について聞きたくなったな」
「誰かにな」
「そうしたくなったよな」
「ああ、それじゃあな」
彼は教育隊の第一分隊士何でも曹候補学生の最後の方の入隊で今は幹部になっている若松務二等陸尉に尋ねた。高校を卒業したばかりで入隊し背は高いがまだ幼さの残る顔の飾ら咲と同じだけの背だが顔立ちは年齢がある。
その彼に聞くとすぐにこう答えた。
「あれは西郷さんなんだよ」
「西郷さんっていいますと」
「西郷隆盛さんなんだよ」
こう河原崎に話した。
「あの曲の敵はな」
「そうだったんですか」
「あの歌は西南戦争の頃の歌だ」
「ああ、あの」
「明治の最初の頃のな」
「鹿児島での戦争でしたね」
「君はあれだったな」
若松は河原崎にこうも言った。
「秋田出身だったな」
「はい、そうです」
秋田の田舎から出てきたのだ。
「それが何か」
「それじゃあ知らないな」
「鹿児島での戦争だったんで」
「熊本城でも戦争があってな」
若松はその西南戦争の話もした。
「とにかく激しかったんだ」
「そうですか」
「それで西郷さんはな」
「凄い人って聞いてますけれど」
「それは知ってるな」
「はい」
学校の授業で習ってだ。
「幕末と維新の英雄ですね」
「そうだったんだ、しかしな」
「西南戦争で、ですよね」
「ああ、担がれてな」
蜂起した士族達にだ、西郷はそういった彼から見て無益でしかない蜂起には反対していたがだ。
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