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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十五話 心が闇に染まりし時
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、必ず来援します”そう言って中将を落ち着かせました。少佐がいなければセレブレッゼ中将は周囲に当り散らしていたかもしれません。少佐の実績、帝国軍地上部隊を撃退した実績が大きかったと思います。
少佐の予測はまた当たりました。司令室の人間は皆少佐を崇拝するような眼で見ています、セレブレッゼ中将もです。何故少佐はそこまで予測できるのか、私は少し怖いです。バグダッシュ少佐も“ここまで来ると神がかっているな”と呟いています。私とバグダッシュ少佐だけが喜びにひたれない……、勝てるのは嬉しいのですが素直に喜べない……。
「司令官閣下、第三十一、第三十三戦略爆撃航空団、第五十二制空戦闘航空団、第十八攻撃航空団に攻撃命令を頂きたいと思います。それと第五艦隊に攻撃要請を」
周囲の喧騒の中、ヴァレンシュタイン少佐の落ち着いた声が聞こえました。まるで少佐だけが別世界にいるようです。
「うむ、良いだろう」
少佐の言葉にセレブレッゼ中将が頷きました。そして少佐が通信オペレータのほうを見ます。オペレータが喜びに満ちた眼で少佐を見返しています。ようやく反撃できる、勝てる、そんな思いが有るのかもしれません。
「第五艦隊に攻撃要請を、敵主力部隊が来援する前にヴァンフリート4=2に停泊中の眼下の敵を攻撃されたし」
「はっ」
「第三十一、第三十三戦略爆撃航空団に命令、撤退する敵地上部隊を攻撃せよ。待機中の第五十二制空戦闘航空団は彼らを援護、戦略爆撃航空団の攻撃終了後は残存する敵地上部隊を掃討せよ」
「はっ」
「第十八攻撃航空団は第五艦隊の攻撃終了後、第五艦隊が打ち漏らした艦を攻撃、敵艦隊を殲滅せよ」
「はっ」
通信オペレータが次々と発せられる少佐の命令を第五艦隊、各部隊に伝え始めました。
「第五艦隊から通信です! 了解、これより攻撃を開始する!」
興奮したような通信オペレータの声です、司令室に歓声が沸きあがりました。そして続けて入った“第五艦隊が攻撃を開始しました!”の報告にさらに歓声が沸きあがりました。司令室はまるでお祭りのようです。皆抱き合い、肩を叩き合って喜んでいます。
ヴァレンシュタイン少佐がこちらに近付いてきます。表情には笑みが有りました。少佐も勝利を喜んでいる、そう私が思ったときです。
「バグダッシュ少佐、ミハマ中尉、帝国軍にとってはこれからが地獄ですよ。このヴァンフリート4=2からどうやって抜け出すか、それだけを望むに違いありません……。彼らはヴァンフリート4=2に来た事を生涯後悔、いえ憎悪する事になるでしょう」
「……」
少佐の口調には間違いなく嘲笑が有りました。私もバグダッシュ少佐も何も言えません。ただ呆然として少佐を見詰めました。そんな私達を見て少佐の笑みが益々大きくなります……。
「酷いと思いますか?
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