第十三話:葬送
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
忘年某月某日の17:45前後、IS学園武道場にてISによる原因不明の暴走事故が発生、用務員一名が重傷を負った。暴走事故を起こしたISはドイツ所属の第三世代機、シュヴァルツェア・レーゲン。搭乗者ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐は死亡が確認され、遺体は収容された。尚、IS内部に記録されていた映像等は暴走事故の影響で損壊しており、事故現場の唯一の目撃者である用務員は、事故の衝撃により記憶が混濁しているため事情聴取の際、意味不明な言動を繰り返している。その為、事件に関する有用な情報は訊き出せないものと断定する。
…国際IS委員会に提出された報告書より抜粋。
転校生ラウラ・ボーデヴィッヒの突然死は学園全体に広がった。同時に、学園で目撃された光景から様々な憶測が飛び交った。
曰く、「ボーデヴィッヒはIS学園に送り込まれてきたスパイで各国の機密を独占しようとして死んだ」
曰く、「ボーデヴィッヒをよく思わない誰かが暗殺した」
曰く、「ボーデヴィッヒは知ってはならないものを知ってしまったために消された」
と。
IS学園用務員室にて、表向き、「傷の療養中」となっている編田羅赦は、足の傷痕を撫でていた。鮮血がほとばしるほどの深手はそこにはなく、世が世なら勲章と同義に見られても不思議ではない立派な、若しくはグロテスクな傷痕がそこにあった。
「流石だなポンコツ。よくやったぞ」
ラシャはそう呟いて、胸に手を当てる。その仕草に応えるように胎動に似た鼓動が腕を伝う。十年間の放浪を余儀なくされた「それ」の反応に満足したラシャは、退屈そうにベッドに寝転んだ。
ボーデヴィッヒにとどめを刺したラシャは、駆けつけた十蔵の部下に拘束された。ラシャがボーデヴィッヒを追い詰めて殺したように扱われかけたが、シュヴァルツェア・レーゲンに残っていた記録によってラシャの正当防衛が明らかになると、データ消去の後、即座に放免され、自室待機のお達しがなされた。
ボーデヴィッヒはISの暴走で死亡したことになり、遺体はすみやかに回収され、検死の際に「疑われないように処置されて」ドイツ本国に送還され行く手はずだ。その間ラシャは精神錯乱を装い、事故に巻き込まれた哀れな一般市民を見事に演じきり、疑いの目を完全に逸らすことに成功していた。
「早く外に出たいなあ……なんたって試し斬りもまだだしなあ」
ラシャは療養期間中に制作した仕込み刃に視線を向けた。退屈しのぎにプレイしたビデオゲームと、観賞した映画から着想を得て作成した一品だ。つや消しを塗ったばかりでまだ乾いていない。早速試し斬りと称して缶ジュースに穴を開けたり、青竹を削ったりしてみたかったが、まがりなりにも現在は療養中の身分。迂闊に外で行動を起こすことなど出来なかった。
「あぁ〜ぶっ刺してぇ……」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ