二章 追いつかない進化 - 飽食の町マーシア -
第26話 動き出している、何か
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
アンデッド化した町長は、目の前で……灰となった。
しばらくしてティアとアランが戻ってきても、シドウは放心状態のままだった。
「ちょっと、シドウ。何ボーっとしてんの? 大丈夫?」
「あれ? あ、ごめん。大丈夫」
垂れていた頭。その鼻をティアにコツンと叩かれ、ようやく我に返った。
「あの二人、地下から逃げちゃったみたい。隠し通路は見つけたけど、途中で壊されて塞がれちゃってて。だから人質だけ解放してきたよ。あとの捜索は自警団の人に任せることにしたから」
「そうか……ありがとう。アランさんもありがとうございました」
「いえいえ。逃してしまってすみません。しかし何か考え込んでいたように見えたのは、やはり町長のことですか?」
「まあ、そうです。生前の記憶がある以上は、やっぱり町の人にきちんと裁いてもらうのが筋だったのかなと。どのみち死刑は免れなかったのかもしれませんが……」
アランは顎を触り、灰がうっすら積もっている地面を見つめる。
「たしかに、それは少し難しい問題かもしれません。ですが今回の事例では、この結末は避けられなかったでしょうね。捕縛は無理だったと思います」
「そうだよ。だいたい、やったのはシドウじゃなくてあの男二人でしょ? いま悩んでも仕方ないじゃない」
ティアも、両手を腰に当て、大きなドラゴンの頭部を斜め下から覗き込みながら、アランに同調した。
アランはさらに続ける。
「あの男二人は、生前の記憶を持つアンデッドを意図的に生成しました。今後また同じようなアンデッドが現れる可能性はあるでしょう。その対策は町として、国として、いやこの世界として、必要になってくると思います。
我々はこのあと、今回の件を町や冒険者ギルドに報告して情報提供をし、場合によっては一緒に知恵を絞らなければなりません。落ち込んでいる場合ではないかもしれませんよ?」
「……はい」
ティアやアランの言うことは正しい。
心はまだ追いついているとは言い難かったが、いちおう頭ではそれを理解した。
「何か、裏で大きな動きが起きつつある――そういうことなんですよね」
イストポートでのシーサーペントのアンデッド化。そして今回のマーシア町長のアンデッド化。
実行犯が同一人物かどうかはさておき、そのタイミングから、同じ意思が働いていると見て間違いない。
おそらくどちらも、実験≠フためにアンデッド化された。
その規模などはまだわからないが、何らかの組織が存在し、そこがやった、もしくはやらせた、という可能性が濃厚だ。
マーシア町長のアンデッド化の実験――本人は実験であるとは夢にも思っていなかっただろうが――は、先ほどの犯人の様子を見るに一部成功≠ニいう評価をしていたように見えた
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ