二章 追いつかない進化 - 飽食の町マーシア -
第26話 動き出している、何か
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してもらって大丈夫ですよ。どうぞ見たり触ったりしてください」
なるべく怖がらせないように言ったつもりだったシドウだったが、すぐに彼らが動くことはなかった。
それを見てシドウはまた少し凹んだが、やがて彼らの中の一人が接近し、シドウの首の鱗を間近で見始めた。
他の人間たちも、続々とそれに倣った。
大陸最南端の町ペザルに近い山にいると言われる一匹――シドウの母親――を除けば、駆除され絶滅したとされているドラゴン。
今日初めてその姿を生で目にしたであろう彼らは、最初は硬い表情だった。
だが、慣れてくると恐怖よりも興味が勝ってきたのだろう。
鱗を触りながら、しっかりとその姿を目に焼き付けようと観察していた。
もともとドラゴン姿に関しては、騒ぎになるとまずいという理由で見せていなかっただけだ。シドウとしては、見られること自体に対して特別な感情はない。
むしろ、こうやってこの姿を受け入れてくれているというのは、嬉しいとまではいかないまでも、安心を感じた。
だがしかし。
それまで輪の外側で眺めていたティアとアランが近づいてくると、途端に雲行きは怪しくなる。
「せっかくだからわたしも混じろっと。鱗がダメならヒゲとか貰えないの?」
「ヒゲもだめ。引っ張らないで」
「切るのは?」
「だめ」
「鼻は人間の姿のときに比べてすごく利くんだよね?」
「そうだけど。わざわざ籠手爪を使って触らなくても」
「だって素手で触ったら汚いじゃない」
「……」
「へー、少し内側は鱗がないから結構柔らかい感じなんだ」
「ぶぅうぇっくしょょん!!」
「キャッ! 汚い!」
「私も前回まだ見足りない場所があったので、参加させていただきましょう」
「はあ」
「肛門は尻尾の付け根かな? どこに付いているのかは確認してもいいですよね」
「いいわけないじゃないですか」
「ふむふむ。だいたい予想どおりのところにありますね。試しに排泄してもらうことは?」
「あの。やっぱり火吹いていいです?」
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