第十二話:斯くして雨は止み
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評価していた。それがラウラには理解できなかった。現に彼はこうして逃げているからだ。自らが下してきた凡愚共のように。それがラウラには何よりも許し難かった。教官の評価を裏切り続けるこの男は一刻も早くこの世から抹消しなければならない。教官の想い人という「弱点」足りえるだけでなく、臆病な腰抜けという教官の評価を裏切り続けることで教官に汚点をつけ続けているこの男を。
この男を殺めたら、次は弟の織斑一夏だ。彼もまた教官の弱点と汚点で在り続けている。速やかに排除し、教官の存在を一刻も早く完璧なものにしなくてはならないのだ。
ラウラは、ハッチを溶かしてこじ開けると、真っ暗なシェルターを進んでいった。足元には包帯の残骸と僅かな血痕が続いていた。通路の狭さから考えて、シュヴァルツェア・レーゲンでの侵入は無理のようだ。
「無駄なことを、貴様にはISさえ要らん。この手でくびり殺してやる」
ラウラは、シュヴァルツェア・レーゲンを解除すると、ナイフを抜いた。このナイフは入隊時から使用してきたものであり、実戦において何人もの人間の生き血を吸ってきた逸品だ。
「編田羅赦、貴様は死ぬ。凡愚共と同じようにこのナイフの取るに足らない錆になるのだ」
血痕を追跡するラウラ。止血が上手くいってないのか、徐々に血痕の量は増えていく様に見えていた。
「素人め」
ラウラはため息を吐いてT字通路を曲がり、3歩進んだ瞬間…右脚に激痛を感じ、バランスを崩した。
「ぐあっ!?」
冷たい床にうつ伏せに投げ出されたラウラの視界に映ったのは、はるか遠くに転がる自分の右脚だった。シュヴァルツェア・レーゲンのレッグバンドが血だまりの中で溺れている。
「な、何いいぃぃ!?」
同時に自らの脚に再度激痛と衝撃が走る。かろうじて振り返ってみると、憎き編田羅赦が血まみれの防火斧を担いで立っていた。
「き、貴様!何故……」
「足跡をわざと残して慎重に後ずさりしたんだ、足跡を踏んでな。『止め足』っていう獣のやり口だ。後はマヌケな君が馬鹿丁寧に足跡を辿って俺に背を向けた瞬間、今に至る」
「くっ……貴様それでも教官が認めた男か!!」
失血で意識が朦朧としかけても、ラウラは眼前の男への敵意を緩めなかった。彼女の言葉に、ラシャは少し驚いたような表情を見せた。
「千冬ちゃんが?……そうかぁ」
「何故だ、何故貴様ごときが教官の想い人なんだ……織斑一夏もそうだ!あいつさえ居なければ教官の汚点は……」
「お前、千冬ちゃんが鉄で出来てるとでも思っているのか?」
ラシャの底冷えするような声がラウラを凍りつかせる。
「成る程、貴様もそうなのか。見下げ果てたやつめ。貴様のような奴がいるから彼女は一人前に涙も流せんのだ!!」
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