第十二話:斯くして雨は止み
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「そのようです。武道場がまるごと倒壊しているみたいです」
その言葉に、千冬は携帯電話を取り落としそうになる。
「ラシャ……ラシャの姿を見てないか!?最後に会ったのは武道場なんだが!?」
「確認出来ていません。先ずは生徒の避難を……?待ってください……何てこと……」
「どうした!?」
「シュヴァルツェア・レーゲン!?……織斑先生、破壊活動を行っているのは、転校生のラウラ・ボーデヴィッヒです!!」
千冬の表情から血の気が完全に引いたのと同時に、携帯電話が砕け散った。
「シュヴァルツェア・レーゲンだと!?ボーデヴィッヒの奴、何を考えているんだ!?」
千冬はロッカーの中に立てかけてあった日本刀を回収すると、武道場跡地へと向かった。
「血が止まらない……」
ラシャは学園の至る所に備え付けられている避難用通路の一角に身を潜めていた。両足は瓦礫や木片でズタズタになっており、破片一つ取り除く度に、激痛が脳を貫く。最早走るどころか歩くことも難しい有様であろう。
「装備は部屋の中、拳銃すら持ってない……詰んだな」
そうなげやりにぼやきつつも、ラシャは諦めていなかった。備蓄されていた医療品で両足を応急処置すると、保存用食料のパワー・バーを一つかじった。薬臭い甘みが彼の思考をクリアにして、心に余裕をもたらしていく。打てる手は一つ。だが、それはあまりにも無謀な賭けだ。だが、ラシャはそれに全額賭ける事にした。
「さあ来い、ボーデヴィッヒ」
一通り備蓄品をかき回したラシャは、満を持して照明装置をぶち壊した。通路全体が闇に包まれると同時に、ロックしていたハッチをプラズマブレードが焼く音がシェルターに響いた。
ラウラ・ボーデヴィッヒは血痕を辿ると、眼前の金属ハッチをプラズマ手刀で切り始めた。ジュウジュウと金属が溶けて滴る音を愉しみながら、ラウラはラシャに対して深い失望の念を感じていた。
試験官ベイビーとして鉄の子宮から生み出された彼女は戦うことしか知らなかった。常に前進して勝利を勝ち取る事こそ彼女の戦闘であり、日常であり、全てだった。故に部隊最強の地位に座る事が出来た。たとえISの出現によって没落してしまっても、千冬の指導のおかげで再度部隊最強に返り咲いてもそれは変わらず、彼女は敵を全て叩き潰してきた。
そんな彼女のささやかな誇りは、『敵に背中を向けない』ということであった。どのような状況であれ、彼女はすべての敵を真っ向から撃破してきた。同時に、そのことを教官である織斑千冬に褒められたことも彼女の誇らしさを助長していた。
編田羅赦は自らとは正反対だ。彼は手向かうことなどしない。教官は生身でISと渡り合うことが可能なのに彼はそれをしない。教官は彼を「私より強い」と
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