第十二話:斯くして雨は止み
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、私の言うことが解るだろう。私が救われて惹かれたように、な」
「行方不明なのに愛しているのですか?」
「当たり前だ。私はそいつに一生を捧げても良い程の恩を受けたんだ。今更他の男に靡くなど考えられんよ」
ラウラは自らの心中に黒い何かが渦巻いていくのを感じた。同時に顔に影が射す。
「教官、やはり自分には分かりません」
ラウラの冷えきった回答を千冬はどう受け取ったのだろうか。少なくともラウラの懐中に渦巻くものは見抜けなかったに違いない。彼女は柔和な微笑みを浮かべて告げた。
「何時か分かる時が来る。いつか、な」
その笑みは見たことない笑みだった。哄笑にしてはささやかなもので、嘲笑にしては善性に満ちていた。達成感からくる笑みでもなかった。ただ一つ言えるのは、その笑みはラウラが目指す千冬像からは遠くかけ離れ、拒絶したくなるようなものであったということだった。
「教官はあのようなお顔をするお方ではない。教官はあのようなお顔をして良いお方ではない。教官にあのようなお顔をさせる貴様らは皆死ぬべきだ!!!」
正気をかなぐり捨てたかのような絶叫を上げたラウラは、肩のレールカノンをラシャに向けて乱射した。幸い、冷静さを失った狙撃故、彼に当たる様な弾道は存在せず、武道場の壁を無慈悲にぶち抜くだけで終わった。同時に、大口径の蹂躙に耐え切れずにいた天井が、遂に轟音とともに崩れてきた。
「そこまでやるのかボーデヴィッヒ!!」
ラシャは軋みを上げる全身に鞭打ち、レールカノンがぶち開けた穴から外に踊りでた。同時に、足の裏に形容し難き激痛が走る。武道場の壁の破片が、ガラス片のトラップのごとく、両足を穿ってダメージを与えていたのだ。
「くっ!?……ふぅうううううう!!」
ラシャは下唇を噛み切らん程噛みしめると、破片の海を渡り切り、落ちていた消火器をぶちまけて即席の煙幕をつくり上げた後、人目のつく校舎に背を向けて走りだした。どの様な事態であれ、彼は用務員。学園の職員であるかぎり生徒に被害が及ぶような真似はできなかった。
倒壊した武道場の瓦礫を押し上げ、ラウラのISであるシュヴァルツェア・レーゲンが姿を現した。その表情には憤りの色が見て取れた。
「逃げ足の早い、あれでも教官の想い人か?立ち向かうような素振りさえ見せなかったぞ……許せん」
ラウラは飛び散った血痕からラシャの情報を習得すると、血の足跡から追跡を開始した。
「編田羅赦、この私から逃げられると思うなよ!!」
「何があった!?」
職員室でラウラとの話し合いの準備を進めていた千冬は、突如鳴り響いた警報に顔色を変えた。同時に携帯電話に着信が入り、確認すると生徒会長の楯無からだった。
「更識、襲撃か?」
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