第4章:日常と非日常
第96話「弓」
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前で私に勝つ気なのね。嘗められたものだわ。」
「........。」
先輩の言葉をまるで聞いていないかのように無視する。
なぜなら、既に私は矢を射るための精神状態に移行しているからだ。
「(...それに、練習中の腕前だけで判断...か。)」
八日程まではそのままだったけど、それ以降の部活では手を抜いていた。
手の内を晒して、逃げられる訳にもいかないしね。
ちなみに、椿が見学してた時の事だけど、部活後に椿が先輩の魂を見たからなのか、“碌な大人にならない”って言ってたっけ?それを聞いた時は笑っちゃったな。
「....始め!」
そうこうしている内に、競射が始まる。
教えられた通りに射位に立ち、弓を番える。
「(....これは、一種の精神統一の儀式。椿はそう言った。だから、ただ、心を落ち着けて...射る!)」
ドッ
私が放った矢は僅かに下にずれ、外れる。逆に先輩は中てたようだ。
...やっぱり、少し緊張してたみたいかな。
「ふふ...。」
「.......。」
私を嘲笑うように先輩とそれを見ている取り巻きが嗤う。
そんな様子に、私は一切影響されずに、次の矢を番え、射る。
タンッ!
「なっ....!?」
「.....。」
ほんの少し、上へと修正したため、今度は命中する。
弓道は、狙いが1mmずれただけでも3pもずれるらしいから、狙いの調整は難しい。
ちなみに、今度は先輩は外していた。これでどちらも一中だ。
「(...心を落ち着け、精神を統一...。)」
タンッ!
呼吸に合わせ、三射目を射る。...またもや命中する。
なんてことはない。ただ、さっきと同じように射っただけだ。
弓道は、突き詰めてしまえは中った時と同じ動きをし続ければずっと中てられる。
その“同じ動き”が、普通はできないものなんだけどね...。
だけど、椿の教えはそれを可能にさせてくれた。
それが精神統一。心を落ち着けて射る事だった。
...まぁ、これを習得できたのは昨日の最後の方だったんだけどね。
それでも凄い方だと椿も素直に言う程だったらしいけど。
「っ.....!?」
同じく中てた先輩だが、明らかに焦っている。何せ、未だに同中だ。
「(....この勝負、貰ったよ。先輩。)」
明らかに心が乱れているのが見なくてもわかった。
...なら、私が負ける要素はもうない。
「ぁっ.....!?」
「...一番、二中.....四番、さ、三中!」
先輩の“しまった”と言った声のしばらく後、“采配”と呼ばれる...中ったかどうかを判定する人の声が響く
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