オーディナル・スケール-nowhere-
起動
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う一文のみ。どういうことかとレインに怪訝な表情を向けてみたものの、彼女は何やらニコニコとこちらを眺めているだけだ。不審げに感じながらも、言われた通りに飾られている日本刀を見物しに行く――そもそも、最初からそのために来たのだから。
「こ、これは……」
飾られた日本刀を《オーグマー》を通して見てみれば、視界の端にその日本刀の制作者や製造年月日どころか、主な材質や製造法に値段まで表示されていく。もちろんその日本刀だけではなく、隣に置いてある脇差しまでもがだ。
「刀自体が《オーグマー》に対応してたら、また何かあるんだけど……」
「何か?」
「えーっと……動いたりとか?」
――要するに、《オーグマー》が正式に発売したともなれば、この自動検索以外にも機能が備わるらしい。それはまだ高望みというものなので、目の前の美しい刀剣の姿と情報を目に焼き付けていく。
「うわ高っ……ねぇ、ショウキくん。リズっちは連れてきてないの?」
「女の子連れてくるようなとこじゃないだろ?」
「む。それは私に対する侮辱とみなしますぞ?」
「あーいや……そういうことじゃなく、だな」
「冗談冗談、分かってるってば」
レインとそんな他愛ない会話をしながらも、大刀剣市の会場を見回っていく。比較的に、あくまでも比較的に安い脇差しにフラフラと吸い寄せられていった時、《オーグマー》からの警告が現れたりもしたが。
……つくづく便利なマシンである。
「あ! あの刀、すごく綺麗じゃない?」
「あの刀は……って、《オーグマー》の解説があるな、これじゃ」
「あはは……ショウキくんの解説が聞きたいし、電源切ろうかな?」
「あいにく、こっちの解説の方が分かりやすいよ」
優秀すぎる、というのも考え物であるらしい。せっかくの自慢げに解説出来る魅せどころを奪っていった、この装着された《オーグマー》に少し嫉妬しながらも、楽しみにしていた大刀剣市はレインとともに過ぎていく。こんなところに来て彼女が楽しめるか、というのはかなり不安だったものの、なんとか満足いくエスコートが出来たようで胸をなで下ろした。
「というか、むしろ多くないか。女子」
「日本刀をイケメンに擬人化するアニメがあったみたいで。それのファンなんじゃないかな?」
「はぁ……?」
言ってるレイン当人もよく分かっていないようで、これ以上に追求することは止めておく。とにかく、レインにとって居心地が悪い空間になっていない、ということが一番だ。そうしてグルリと一周してきた後は、気に入った刀剣の売り買いとなるのだが――残念ながら、即売会に参加できるような予算はない。誠に残念ながら。誠に残念ながら。
「今日はありがとう、ショウキくん。おかげで
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