オーディナル・スケール-nowhere-
起動
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たいなのだけど」
「それでもあの《オーグマー》だろ? 今は持ちきりじゃないか」
まさかあの《オーグマー》のことだとは思わず、素で驚愕してしまうこちらに対し、レインは頬を紅く染めながら慌てて謙遜していく。自分で自慢げに話しだしたにもかかわらず、いざ褒められたらこうして逃げ出すのは彼女の悪い癖だ。
「あとはあの子のモーションキャプチャーなん――あっ」
そうして言い繕うとしていたところ、どうやら話してはいけないことまで口に出してしまったようだ。慌てて自らの口を塞いだレインだったが、モーションキャプチャーがどうのというのは、しかとこの耳は捉えてしまった。
「……誰にも言わないからさ」
「お願いします……お詫びにこれ、貸してあげる」
深々とこちらに謝罪するレインから、何やらヘッドホンのような物が手渡された。お詫びの印として渡されたそれは、先程に電車内で見たそのものだった。
「《オーグマー》……?」
「そ。宣伝のためにって預からせてくれたの。ご家族の方に勧めて下さいって」
「……家族になった覚えはないけどな」
「へっ!? あ、いや、そういうことじゃなくて、要するに試供品ってこと!」
声を裏返せながらこちらから顔を背けながら、レインはもう一つ取り出した《オーグマー》をセットする。それに倣って耳に引っかけるようにセットすると、《オーグマー》の視界が美術館に広がっていった。
『《オーグマー》へようこそ』
無機質な電子音声が耳の近くで響き渡ったが、どうやら自分にしか聞こえていないらしい。視界には今までの美術館だけではなく、パソコンの画面のようなものが広がっていた。試しにメールボックスに触れてみると、確かな感触とともにメールボックスが展開する。
「……コホン。ショウキくん、どんな感じ? 噂の拡張現実は?」
「なんか……変な感じだな」
そんな状況に戸惑っていると、咳払いとともに《オーグマー》を装着したレインが視界に入ってきて、ありのままの感想を伝えていた。メールボックスを開いた時の様子が、VRゲームの中でストレージを操作する時とそっくりで――まるで、現実空間にいながら仮想現実にいるかのようだった。
「分かる分かる。でも便利なんだ、ちょくちょく使わせてもらってたけど」
そんなこちらの様子に身に覚えでもあるのか、レインはクスクスと笑いながら何やら何もない空間を操作する。するとこちらのメールボックスにメールが受信され、デフォルメされたレインの似顔絵が視界の端でニコニコと笑っている。
「メール届いたでしょ? 携帯できるパソコンみたいなものなの、これ」
「へぇ……」
試しに今し方届いていたメールを開けてみれば、内容は『日本刀の方を見てみて』とい
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