第53話『合縁奇縁』
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「大丈夫か、嬢ちゃん?」
颯爽と現れたその影は言った。
その右手には、粉々になった氷柱の欠片が掴まれている。
目の前に立っているのが男性というのはわかったが、うつ伏せの体勢上、顔までは視認できない。
「だ…誰だよ、キミは…?」
「お前か、この街を荒らしたのは。随分お疲れの様子だけどよ、ちょいと面貸しちゃくれねぇか?」
男性の声には、多分の怒りが含まれていた。きっとこの人も、ミライさんの様にこの街が好きなのだろう。
何にせよ、一応は助かったようだ。
「…人の質問に、答えてくれないかな?」
「おっと、そりゃ悪いな、順序間違えちまった。…俺の名はアランヒルデ、最強で最恐の男だ。でもって、王都騎士団団長さんだ」
「え…!?」
ユヅキはうつ伏せのまま息を飲む。
今、目の前に立っているのは、かの有名なアランヒルデなのだ。驚かない方がおかしい。
「…で、その団長さんが…何の用な訳?」
「言ったろ、街をこんなにした大罪で、ちっとばかしお前を連行したい。拒否権はねぇぞ?」
「そのくらいで、ボクを脅せるとでも…?」
「だったら少ーしくらい、乱暴に扱っちまうがいいか? 今、虫の居所が悪いんでな」
「ボクに敵うとでも・・・うっ!?」
アランヒルデがそう言うや否や、ヒョウが膝から崩れ落ちる。どうやら、アランヒルデがヒョウの腹に高速で拳をぶち込んだようだ。・・・全く、アランヒルデの動きが見えなかったけども。
そしてようやく、アランヒルデの姿を見た。特徴を挙げろと言われれば、迷わず"炎の様に赤い髪"と答えるぐらい、彼の赤髪は際立っている。
「この…!」
さすがに1発ではヒョウも倒れない。腹を殴られた反撃とばかりに吹雪を放つ。しかし、
「悪いが、そんな弱々しい吹雪じゃ、俺はもちろん、木の葉だって飛ばないぜ?」
「がっ!?」
アランヒルデに吹雪は通じず、またもヒョウは殴られてしまう。
それにしても、疲れてるとはいえ、ヒョウがここまで圧倒されるのは驚きである。戦ったから、拳を交えたからわかるのだ。彼は本当に強かった。なのに、
「おらよ!」
「うっ…!」
なす術なくやられる様子を見ると、苦戦していた自分が情けなく思えてしまう。
「観念するか?」
「ボクは王になるんだ…。こんな所で諦める訳には、いかない…!」
ヒョウが言い切ると、アランヒルデが感心したように頷く。そして言った。
「志があるってのは立派なことだ。でもよ、お前みたいな帝国主義者に誰がついていくと思う? 民の率いる器がない奴は、王とは呼べねぇな」
「…!!」
辛辣な一言だった。
ヒョウ
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