第53話『合縁奇縁』
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っ!!」
そしてユヅキの言葉を聞き、重大な事を思い出す。
そういえば、この世界に居られるのは3日間。即ち、時間にして72時間だ。でもって、今日は4日目。1日目の昼ぐらいにこの世界に来たのだから、帰りもきっとその辺りの時間帯。
つまり、あと数時間で皆と別れなければならない。
「ハルトの話を聞いて、どうしようもできないのはわかってる。でも、ボクはハルトと一緒にいたい!」
その言葉で、胸が締め付けられる。
そして、半端な気持ちでこの世界に足を踏み入れたのを後悔した。
友達が引っ越す、だなんてレベルではない。ユヅキとは親友と呼べるくらいの仲になってしまったのだ。
別れたくない気持ちは晴登にも存在する。
「……避難所に行ったら、俺は帰るよ」
それでも、悲しみを噛み殺しながらそう言うしかなかった。
*
「ハルト、調子はどうだ?」
「だいぶ動けるようにもなりましたし、心配しなくて大丈夫ですよ」
「そう言われても、ハルトは何度も死にかけてるし、心配だよ」
「ははっ、本当にミライさんには感謝してます。ありがとうございました」
避難所は学校の体育館の様な所だった。
床が一面に広がり、各々が好きなように座ったり、寝てたりしている。
晴登もその1人。今はラグナとミライと話している。
ユヅキもその場に居るのだが、一向に口を開こうとしない。仕方ないか…。
「そうだハルト、お前に渡したいもんがある」
「…? 何ですか?」
「ほらコレ」
そう言われ、ラグナから手渡されたのは1枚の封筒。
何かが入っているようだが、検討もつかない。
「ラグナさん、これは…?」
「給料だよ。お前は昨日の時点で雇用期間を過ぎてるし」
「あ、ありがとうございます…」
給料、ということはこの世界のお金が入っているのだろう。
申し訳ないが、貰ったところで元の世界に帰るから使い道はない。ただ、返すのはそれはそれで気が引けたから、素直に受け取っておく。
「……それじゃあ、これで帰ります」
「寂しくなっちまうな。でも、会いたくなったらいつでも来いよ」
「僕も、また君と会えるのを楽しみにしてるよ」
「はい、本当にお世話になりました」
思いの外、2人はすんなりと送り出してくれる。引き留められると困るから、逆に良かった。
立ち上がる瞬間にふとユヅキを一瞥すると、彼女は黙って俯いている。
「じゃあね、ユヅキ」
「……」
返事はない。
だが時間が迫っているため、待つことはできない。
どんな風に帰るのかはわからないが、急に消えたりしたら周りの人々が驚いて
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