第53話『合縁奇縁』
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人で倒すんですか?!」
「あ? お前は今動けるのか?」
「いや、動けませんけど・・・」
「だったらそういうことだ。お前は休んでろ、ユヅキを捜すために」
晴登は何も言えなかった。ラグナの言う通りである。
自分には何もできない。ラグナを信じて任せるしか、手段がないのだ。
「…お願いします、ラグナさん。俺を、ユヅキを助けてください!」
「言われなくても!」
それからの事の顛末は早かった。
何十匹もいたウォルエナが、1人の男に続々と倒されていく。素手であるにも拘らず、ラグナは容易くウォルエナの脚を、頭を、胴体を破壊していった。
さすがに晴登も、その様子には唖然とするしかなかった。
「強い……」
その呟きは、自然と洩れていた。ラグナの強さを尊重し、或いはラグナへの尊敬の念を抱いて。
数分後には、血に塗れた拳を掲げるラグナの周りに立つウォルエナは、1頭もいなかった。
*
頭が痛い。身体が怠い。力が出ない。
だけど、思考だけは無駄に働く。
自分が意識を失ってから、どれだけの時間が経ったのだろうか。
思考ができるということは、死んではないみたいだ。
耳だって正常に働いていた。
誰かの声が、絶えず耳元で聴こえてくる。
その声に誘われるように、ユヅキはゆっくりと目を開いた。
「起きたか、ユヅキ?」
「ハルト……」
目を開けると、そこには晴登がいた。
同時に、薄暗い空も同時に見える。
自分は外で寝ていたのか。
「・・・で、何でボクはハルトに膝枕されてるの?」
「いや、ミライさんに言われたの! その方がいいって! 別に俺がしたいとかじゃない!」
「嫌々やってるの…?」
「あ、いや、そんな泣きそうな顔しないでくれ! 全然嫌じゃないから!」
晴登は焦るように弁明しているが、もちろん少しからかっただけである。
にしても、自分もだが晴登が無事で良かった。アランヒルデがしっかりと戦ってくれたからだろう。お礼を言わないと。
「ハルト、アランヒルデさんは?」
「アランヒルデさんなら、ヒョウを連れて城に戻ったよ」
「そっか…」
いないと言われても仕方のないことだ。何せ彼は王都騎士団団長。忙しいのは知っている。
きっと、ヒョウは逮捕という扱いだろう。もう会うことはないと思う。
「……全部、終わったの?」
「…うん。犠牲が多く出すぎたけど、ウォルエナは全て討伐されたよ。もう、終わったんだ」
それを聞いて、ユヅキは緊張の糸が切れた。大きく安堵の息をつく。
「ユヅキ! 起きたのか!」
「
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