第53話『合縁奇縁』
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では立場が対等な時に、一方が恐怖の感情に囚われてしまえばどうなるだろうか? 答えはシンプル、もう一方の勝利は確実であり、弱肉強食の強者に君臨できる。
「つまり、ビビってたらお前の胃袋行きなんだよ。そんなとこ、死んでも行きたくねぇな」
「ガル…」
「うちの部下には手を出させねぇ。大人の甲斐性見せてやるよ」
その言葉をキッカケに、彼我は1歩を踏み出した。
ウォルエナは相手を噛み殺さんと、ラグナは部下を守ろうと、互いに走る。
「ガウッ!」
ウォルエナは跳躍し、上方からラグナに飛びかかる。
勢いがあり、牙に刺さりでもしたら大怪我は免れない。
「けど、空中は無防備だって知ってるか?!」
「ガッ…!?」
ラグナの拳が牙のギリギリ上、ウォルエナの鼻にクリティカルヒットする。固いものが砕けるような音がし、吹っ飛ばされたウォルエナはそのまま動かなくなった。
「昔はやんちゃしてたからな、喧嘩にゃ自信があんだよ」
自嘲気味に笑い、ラグナは呟く。
結局、ものの数分でウォルエナを討伐してしまった。2人を逃がした意味も、あまりなかったと思われる。
「あーあ、面倒くせぇ。さっさと追いかけねぇと」
ラグナは2人が向かったであろう方向へ走り出した。
*
「・・・てな訳で、今までずっと捜してたんだよ。見つかって良かったぜ、ハルト」
「え、でも、途中でウォルエナには…?」
「遭ったぜ、何度も。全部ぶん殴って撃退したがな」
驚いた。ラグナにそこまでの戦闘力があったとは。確かに拳が血塗れである。
どんな魔法を使うのかは聞いてないが、そこまで素の力があるということは、ひょっとするとラグナはかなり強いのかもしれない。
「それにしても、やっぱり逃げてなかったんだな」
「え?」
「お人好しのお前らのことだ、すぐ逃げずに困っている人を助けていたと思ってたぜ」
図星とまでは言わないが、外れてもいない。
晴登の脳裏に妹に似た金髪の少女が浮かぶ。
元はと言えば、彼女を助けようとして、ユヅキとはぐれたことが始まりだった。そう思うと、人生って何が起こるかわからないと、改めて思わされる。
「ところで、ユヅキはどこだ? 無事なのか?」
「…確証はありません。けど、無事だとは思います」
「……色々あったんだな。わかった。急いでこいつら片付けて、ユヅキを捜そう」
苦い顔をして、ラグナは応える。
ほとんど娘のように感じているユヅキの安否が不明なのだ。仕方ないことだろう。
だが、ラグナの言葉には些か無茶が含まれていた。
「ちょっと待ってください、この量を1
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