第53話『合縁奇縁』
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って訳か。気を抜く暇もないな…。と言っても、策は尽きてるからジリ貧状態…」
猶予が有ろうと危機的状況に変わりはない。
ミライももう策はなさそうだし、これは本格的にマズいだろう。
「ここで誰かが助けに来るお約束展開ないのか!?」
助けに来る候補の1人、アランヒルデがユヅキの助けに入ったなど知る由もなし。
ありもしない話で、何とか現実を遠ざけたい晴登だった。
「ハルト、現実逃避は良くないよ。まだ諦めてはいけない」
「ですけども・・・」
今感じているのは、もちろん絶望。だからとても怖いし、泣きそうなくらいだ。それなのに涙が出ることはない。しないのではなく、できないのである。
積み重なった絶望で、もう涙は枯れ切っていた。
「諦めては、いけない・・・」
「そうだ、ハルト。君はヒョウとも戦った。今更あんな獣に怯むのかい?」
「…それ言われたらおしまいですね」
思わずふふっと、笑みをこぼしてしまう。
そうだ。自分は強大な鬼族と戦ったのだ。ウォルエナなんて、言ってしまえば雑魚同然である。
「でも、今の力じゃ敵わないと思いますけど?」
「だったら、数を増やせばいい。1人で立ち向かえないなら2人で、それでもダメなら3人で。協力することは弱さじゃない」
「俺たちは2人止まりですよ?」
「本当にそうかな?」
ミライが不敵に笑う。
その様子に疑問を抱く晴登だが、それはすぐに氷解した。
──目の前に、黒い影が降り立つ。
「……!!」
晴登は唖然とする。それは、目の前の人物があまりにも意外過ぎたからだ。
「何で気づいた?」
「僕には魔力が視えますからね。にしても、どうしてわざわざ助けに来たんですか?」
「はっ、当たり前なことを聞くんじゃねぇよ」
未だに後ろ姿を見せる影・・・もとい、男。
彼はぶっきらぼうな言い草で、ミライの問いに答えている。
そして、彼は言った。
「──俺は、うちの部下と客に手ぇ出して欲しくねぇだけだよ」
無精髭がよく似合う、時計屋主人ラグナ・アルソムが、そこには居た。
*
〜数時間前〜
「…頑張れよ、2人とも」
「ガルル…」
「おっと、お前のことは忘れちゃいねぇって。そう急かしなさんな」
あくまで楽観的な態度で、ラグナはウォルエナと対峙した。しかし、本心は決して穏やかではない。
ウォルエナが人喰いであるというのは周知の事実。つまり、ヒトとウォルエナを比べた時に、食物連鎖の関係でどちらが上かなど決めることができないのだ。故に、大人であろうとウォルエナにはビビるのは条理である
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