暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
弱きは言い訳にならず
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女性《F型》だった。リスのように人懐っこそうな丸い顎のラインに大きな瞳。ゆるく結われたセミロングの黒髪に、見るからに初心者という装備から、どこか小動物のような守ってあげたくなる系の匂いを醸し出していた。
ここは領主として、俺が声をかけたほうがいいのか、とか考えていたファナハンだったが、しかしその思考は思いもよらぬ方向からブン殴られることになる。
なぜなら、しばし天頂部できょろきょろと周囲を物珍しげに見回していた少女は、飛行するケットシー指揮官を見つけて叫んだのだ。
「お、小生が一番でござるか!!?やったー、いえーい!!ヒスイさーん、入れましたよー!!」
そう、嬉しげに。
勝ち誇ったように。
「…………………………………………………………………………………ぁ?」
一瞬、自分の半分くらいの背丈の少女が言った言葉が分からなかった。
いや、分かろうとしたくなかったというのが正しいかもしれない。なぜなら、その時ファナハンは、薄々彼女らが何をしようとしているのか――――どうやってこのちっぽけな種族を潰そうとしているのか、そのえげつない手段が理解できたような気がしたのだから。
理性ではなく。
理屈ではなく。
本能で、嫌な気配を感じた。
だがありえない。この首都、シナルの領地内にいる限り、スプリガンのHPは減らない。たとえ内部から暴動でも起こしても、それこそその辺の一般プレイヤー一人でも取り押さえられる。そしてそれに外で待機しているフェンリル、ドラグーンが介入しようものなら、この場は収められても結果的にはファナハンの願う通りになる。
すなわち、ケットシーの各種補正値への運営の介入。下方修正がかかろうものなら、ヤツらの根底を支えている二つの軍は瓦解する。
そうすれば、今のスプリガン絶対弱者のパワーバランスも揺らぐはずだ。
―――そうだ……だから、だから大丈夫だ。何も問題はない。
改めて目的を想起し、自らを奮い立たせる。
だが、同時にスプリガン領主は感じていた。その背に流れる液体が、冷や汗に分類されることに。
はたして、その懸念は現実となった。
シュッ、シュワッ。
軽い音。
その音が、死神の振るう大鎌の風切り音に聞こえるのは気のせいだったのだろうか。
やかましい新人、その真上。
追随するように、折り重なるように、幾つもの転移光が沸き起こった。
―――増……い……ん?
思考が途切れたのには訳がある。
その、新米プレイヤーの誕生を祝福するエフェクト。それが、重なりすぎて夜のシナルの街を真昼のように染め上げたからだ。
「………な」
まるでそれは、封を破ったかのようだった。
とん
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